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068.変なところでつながって

 目的地であるソードバルの教会は、やっぱり街の中心部にあった。石畳に煉瓦でできた噴水広場があって、そこから道を少し入った高台にある。

 で、ファルンの後ろについて教会に入ったところで、俺は見覚えのある顔に出会った。


「ようこそ、ソードバル中央教会へ」

「……ん?」


 いや、見覚えあるというかどこかで見た顔なんだけどなあ。普通の僧侶さんだし、うーん。

 そんな事を考えている俺の前で手形を見ていた彼女が、「まあ」ととても嬉しそうな笑みを浮かべた。


「あなたがファルンさんですのね。姉からくれぐれもよろしく、と手紙が来ておりますわ」

「姉、ですか」

「ブランナといいます。私は妹のカロリナですわ」

「まあ、ブランナ様の妹さんですのね」


 ……そうか、ファルンと一緒にナーリアの村の教会にいたブランナの妹か。通りで見たことあると思ったんだ。姉ちゃんそっくりだわ、彼女。

 これはアレだ、姉妹丼……いや、食ってないか、姉妹吸入? に洒落込むのもいいかもな。

 ま、チャンスがあれば、だけど。そういえばブランナ、ナーリアでしっかり普通の僧侶やってるかな。ネッサも……あれは普通の村長やっててくれ、頼むから。

 で、ブランナの妹……えーとカロリナか、その彼女は俺たちをくるっと見渡してふと首を傾げた。


「あら。姉の手紙より人数が増えていますわね」


 ブランナ、同行者の人数とか手紙に書いてたのか。そりゃまあ、ウサギ兄妹が増えてるもんな。

 そこらへんは、ファルンがちゃんと説明してくれた。ついでに当人たちも頭を下げる。


「途中でこちらのミンミカさんが加わりまして、エンデバルでミンミカさんのお兄様であるアムレクさんと会ったんです」

「ミンミカですー」

「アムレクです。エンデバルのきょうかいに、とってもおせわになりました」

「なるほど。アムレクさんは、きっと日頃の行いが良かったので救いの手が差し伸べられたのですね」


 ……そういうことにしておこう。ニコニコ笑ってるカロリナの気分を損ねる気には、全くならない。

 ただ、マール教なんだから仕方のない話が出てきたりはするんだけど。


「サブラナ・マール様も、修行の民が増えたことをきっとお喜びですわ」

「ええ、わたくしも同行者が増えたことを感謝しております」


 こういうのとか、な。

 実は敵対する邪神が自分の配下探して旅してるんですよー、なんて彼女も他のマール教も知らないわけだし。いや知ってたまるか。


「そういえば、本日はどちらかに行かれました?」

「入江を拝見いたしました。勇者ソードバル様が我らが神より与えられしお力、誠に素晴らしいものでしたのね」

「そうですのよ。三日三晩に渡り、神の儀式を受けられたと伝わっておりますわ」


 ほのぼのと続く僧侶同士の会話なんだけど……おーい。

 要はサブラナ・マールのやつ、勇者ソードバルと三日三晩ずっこんばっこんゆうべもおたのしみでしたね、ということかよ羨ましいな! いや今俺獣人ロリっ子だけど!


「では、聖なる床には明日にでも?」

「そのつもりです。少し距離がありそうですので……同行者に幼い子もおりますから」

「そうですわね。ゆっくりご覧になられたほうがよろしいかと」


 この会話も、何も知らずに聞けば観光名所にいつ行くかって話なんだけどさ。聖なる床ってその、神様と勇者が三日三晩頑張った場所なんだよね……いや、そういうもんなんだろうけどさ。ええいマジで羨ましい。

 と、ふとイケメンボイスが耳に届いた。カーライルなんだけどな。


「コータちゃん。シーラ様が」

「シーラお姉ちゃん?」


 ちらりと背後に視線をやると、俺の背中を守るように立っているカーライルの横にシーラが足音も立てずに歩み寄ってくる。そうして俺のそばで屈み、頭をなでてくれながら報告をしてくれた。


「教会内には入ってきておりませんが、外で見ているようです」

「分かった」


 さっきの視線の連中か。さすがに、マール教の教会にずかずか入ってくる勇気はないようだな。

 あれ、そうするとしれっと入ってきてる俺、すごく勇気あったりする? いや、そんなわけないけどさ。

 単純に、アルニムア・マーダだってバレてないからだけど。

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