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064.観光名所は激戦地

「……何か納得が行きません……」

「回復したのだから、良かったではないか」

「それはそうなんですが」


 宿を出て街の大通りを歩きながら、カーライルはしきりに首をひねっている。人が多くて、時々ひょいひょいと避けながら歩いていくのが何というか懐かしい感覚だ。それはともかく。

 いや、シーラのマッサージで体調マジ回復したんだからいいじゃねえか、とは俺も思うんだが。当のシーラもそう言ってるし。

 ま、マッサージ中のぎゃーとかいだだだだとかいう悲鳴は良く聞こえていたけどさ。途中から静かになったの、布か何か噛ませたっぽい。


「さあ、早く参りましょう。入江はもうすぐですわよ」

「いりえ、いりえー」

「うみだよ、ミンミカー」


 先頭に立って俺たちを誘導してくれてるファルンと、そのすぐ後ろにくっついていっているウサギ兄妹がなんというか、小学校の遠足っぽく見える。ウサギたちが幼い言動になってるのが原因かな。ま、いいか。


「行きましょう。コータちゃん」

「はあい。カーライルお兄ちゃん、行きますよー」

「わわ、お待ち下さいっ」


 ……こっちはこっちで、兄夫婦と年の離れた妹とかか? うわ、俺が妹か。外見上そうなるんだよなと分かっちゃいるけど気持ち悪い。ええい、いい加減に慣れろ、俺。

 そんな組み合わせに見える邪神とその配下ども一行は、観光名所を目指してたったかと足を早めた。別に破壊活動に来たわけじゃないから、文句を言われる筋合いはないぞ。




 勇者ソードバルと海王ネレイデシアが激戦を繰り広げ、そして勇者が勝利した地である入江。

 間近で見た俺の感想は、ぶっちゃけこんな感じだった。


「まー、分かりやすく爆発した跡だな」


 いやだって、マジ真ん丸の穴の中に海水が入り込んで入江になってるわけよ。それを、丸く削られた崖の上から覗き込むように見るわけ。多分、水面付近を中心にして爆発した衝撃で大地が球状に削られてこうなった、っぽい。

 そういったことは、今俺たちがいる展望台に据え付けてある記念碑に書き込まれている。文字の刻まれた石版の上に、手を空に掲げた勇ましい鎧姿の女性の像があるんで、これが勇者ソードバルということのようだ。……おっぱいが慎ましやかなのは実際に貧乳だったのか、鎧のせいなのか、そこら辺は分からない。

 その像の前で拝む人も数多くいて、マール教信者にとってみれば大事な聖地巡礼のひとつなんだろうな、うん。

 つかファルンも拝んでるし……いや、彼女の場合拝んだりしておかないと逆に怪しいのか。マール教の僧侶様が、勇者の碑に敬意を示さないとさすがにな。

 で、まあ軽く文章を読んでみる。さすがに露骨な描写は避けていて、サブラナ・マールの力を得た勇者がこの地に攻め込む海王を迎え撃った、とかなんとか。

 で。


「『元は砂浜だったが、勇者と海王の戦により入り江となった』……なるほど」

「ということは、この下も」

「ぐるっと丸くえぐられてる、ぽいな。海の色が濃いし」


 カーライルと一緒に下を見て、そこにある海水の色を確認する。あっちの世界でテレビで見た、ブルーホールっつったっけ? あんな感じで色が濃い。だからそう言ったまでなんだが、ミンミカが目を丸くした。


「ほえ、そうなんですか?」

「理屈は分からないけど、そういうもんらしいぞ」

「コータちゃま、すごいですねえ」

「そうか?」


 アムレクもえらく感心してるんだが、そこまですごいとか言うもんか?

 そんな事を考えていたら、シーラが理由を教えてくれた。


「……ウサギ獣人は、あまり海に出たりしないようですから」

「あ、そういうことか」


 あまり海に来ないから、深いと色が濃くなることも分からない。というか、多分生活圏において必要がない知識だから。

 そうなると、この旅はこれはこれで、いいことなのかもしれないな。ミンミカとアムレクに、いろんなものを見せてやれるという意味で。

 それがいいことか悪いことか、俺は知らないけれど。

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