059.次行く街はいわくあり
さて、さて。
シーラたちが帰ってきたところで、次に向かう街の選定に入ることにする。てかお前ら、また色んな服買ってきたな。
「アムレクに似合うような服をいくつかと、コータちゃん用の季節モノをですね」
「……保護者でなければ、ただの変態だぞ。カーライル」
「ぐはっ」
いろいろなロリっ子用の洋服を広げて、ニマニマするカーライル。シーラに冷静なツッコミを入れられて、なかなかの大ダメージ食らってるあいつはほっとこう。ただ、明るいピンクのフード付きのポンチョは可愛いと思う。着るのが俺でなければ。
「ミンミカもかわいい、とおもったので、かってきました!」
「先々必要になると思ったので、皆の分を購入してきた」
うん、ウサギ娘のミンミカが着れば可愛いんだよな。つーか、同じの買ってきてるし。シーラは白、ファルンは明るい水色らしい。
一方アムレク用はカーキとかくすんだ青とか、まあアースカラーというやつかな。
「ぼ、ぼくにもですか?」
「案ずるな。お前用は普通の上下や上に羽織るジャケットなどだ」
「アムレクさんは体毛が明るい茶色ですから、自然の色がお似合いですわね」
なるほど。ミンミカは白ウサギだから合わせる色もあまり考えなくていいけど、茶色ウサギなアムレクにはそれなりに色を考えなければ似合わない、と。
……ま、いいけどさ。みんな楽しそうだし。
それはさておきまくって。
「この先でしたら、ソードバルの街に行かれるのがいいんじゃねっすかね」
地図を見ながら、ガゼルさんがそう言ってくれた。その名前に、俺以外全員がん、と反応する。
「ソードバル、といえば勇者の名前がつけられた街、ですわね」
「ええ。サブラナ・マール様のお力を受けた勇者ソードバルが海王ネレイデシアを倒した、と言われてる街っす。海のそばなんで、魚がうまいと聞いたことあるっすよ」
「海王ネレイデシア……へえ」
「その戦の記念碑もあるんで、観光地としても人気っす」
あーあーあー、そりゃ反応するな。
ガゼルさんとファルンはマール教の信者として、過去の誇らしい戦勝が刻まれた街だから。
シーラやカーライル、ウサギ兄妹はその逆で、自分たちの崇める四天王の一人が敗れたことが記録に残る街だから。
でもまあ、確かに観光地にはなるよな。そういう街なら、ファルンが修行の一環として向かっても何もおかしくはないし。
「いってみますか? コータちゃま」
「うん。行ってみたいです」
「それなら、決まりですね」
ミンミカが尋ねてくれたのに、俺は素直に頷く。それで、ファルンも受け入れてくれた。一応彼女がこの一行の責任者、ということになってるから、彼女がOKを出せばそれで決まる。
海王ネレイデシア。俺の配下で、四天王の一人。海王だから、海の生物の獣人……獣人? まあそういう感じなんだろうな。
恐らくはシーラと同じく、生まれ変わってきてくれてるだろう……と、思う。実際どうなんだろう、とは部外者がいるここで尋ねたりはできないよな。
でも、そのガゼルさんはとっても親切に、大事なことを教えてくれた。
「ソードバルとここ往復してる乗り合い牛車が、確か明日来るはずっす。出発が明々後日になるんで、予約だけしとけばいいっすよ」
「あ、予約できるんですか」
「できるっすよ。さっきも言いましたけど観光地なんで、人気があって乗れないこともあるっすから」
ファルン、そこ目ざとい。しかし、確かに観光地行きの公共交通機関なんだから混雑もするだろう。
というか、観光旅行できるくらいこの世界、生活とか安定してるんだな。……マール教に限る、んだろうけれど。
「片道二日ほどかかるんで、気をつけてくださいっす」
「すまん、ありがとう」
「いえいえ。ところでカーライルさん、そろそろそのポンチョしまわないっすか?」
「ごはっ」
……まだ持ってたのかお前。ほんと、いい加減にしろよ?




