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005.おかわりしたらあらびっくり

 さて。

 食事ついでに下僕にしたいというか、したほうがいいのがもう一人いる。もちろん、ファルンの横で転がってる彼女なんだけど。


「次は、えっとシーラだっけ」

「コータ様、この者の名をご存知なのですか?」

「さっきファルンが言ってたし。な」

「あ、はい」


 あれ、と一瞬思ったけど、カーライルはファルンとどたばたしてたからな。聞き流しててもおかしくねえわ。

 そういえば彼女たち、何でまたこんなところに来たんだろうな。まあ、聞きゃいいけどさ。


「お前さんたち、二人揃って俺をやっつけに来たの?」

「やっつけ、といいますか。シーラはわたくしと共に、神官の排除に参った剣士でございます」

「あ、私狙いでしたか」


 すらすらとしゃべってくれるのはいいんだけど、そうやって聞くとたまったもんじゃねえな。あとカーライル、表立って動けないような身分みたいなんだからそこら辺はもっと気をつけろ。


「カーライル。お前さん、仲間いなかったのか?」

「昔はおりましたが、現在は連絡の取れる範囲では確認できておりません。もしかしたらいたのかもしれませんが、コータ様の信者であることを表沙汰にはできませんので」

「あー、確かに」


 なるほど。もともとのネットワークというか、そういうのがなかったわけだ。この神官は。昔いたってことは、排除されたり向こうに寝返ったりしたのかもしれない。

 それで、一人で調べて一人で来たんだ。復活するかどうかも分からない、邪神復活のために。

 ほんのちょっとだけ、ホロリと来た。ほんのちょっとだけな。


「それで、怪しいやつってーかカーライルを見つけてファルンとシーラが追いかけてきたら、俺復活と。そういうことでいいか?」

「は、はい。よもやこのような遺跡に、コータ様が封じられておられるとは思いませんでしたので」

「知らなかったのか……伝説か何か、なかったのか?」

「古くからの禁足地、としか伝わっておりません」

「私も、ここまで警戒されていないとは思いもしませんでした」


 ファルンの言葉に、カーライルが呆れたように首を振る。

 何だよ、俺封じた場所だっての伝わってないのかよ。やばいもんあるんだから、もうちょっと警備厳重にするとかしやがれ。禁足地ってことは立入禁止にしてたってことだろうけど、それでこっちの信者がおとなしくしてると思うのだろうか。

 それにサブラナなんとか、そういうのがあるから気をつけろとか、ちゃんと後世に伝えとけよ。どこの世界でもホウレンソウは重要だろうが。


 ……こっちにほうれん草、食う方の、あるんかな。おひたし食いてえ。

 いや、飯の話を思い出すってことはまだ腹減ってんのか、俺。早くシーラ吸おう。


「こちらさんも、早く下僕にしたほうがいいな。カーライル、動かすの手伝ってくれ」

「ああ、さすがにコータ様には重いですね。承知しました」


 よいしょ、と楽しそうにシーラを転がすカーライル。

 あれ、ここで気がついたけどシーラ、背中にちっこい羽生えてる。キューピットのみたいな、ちっこいやつ。鎧の隙間からひょっこり出てる……というか、羽通す用の隙間か、これは。


「羽生えてる」

「シーラは翼人族の末裔なんです。何故か翼が成長しなかったので翼人族の村を出て、今はこの近辺で魔物などを狩ってくれています」

「なるほど」


 ファルンが教えてくれたので、納得。俺が角としっぽ持ちなように、羽のある連中もいるんだな。

 なぜか、ってことは他のこういう連中は天使みたくでっかい羽持ってるとか、そういうことなんだろうね。鎧に隙間があるっていうのは、そこから本来ならでっかい翼を出さなきゃいけないからだ。

 それで翼が成長しなかったシーラが村を出たってのは、多分……。

 それはそれとして。

 念のため、ファルンにも仕事やっとくか。今度は二人でガン見、ってのはさすがにちょっとその、あれだ。気が引ける。


「ファルンは周囲を見ていてくれ。他に誰か来てないとも限らないし、紛れ込んできてても厄介だし」

「分かりました。近くの村人などが紛れ込んでくると面倒ですから、しっかり見張っておきますね」


 指示すると彼女は嬉しそうに頷いてから、自分の杖を拾って石段の前、降りる方向に向かって仁王立ちになった。

 ああ、ちゃんと自分で考えて動くことはできるんだな。よかったよかった、ぶっちゃけその方が楽だ。

 命令したことしかやらない、ってのは突発的な事態に弱いから困るんだよな。それで逃げた、社畜候補いたし。いやよく逃げたなあいつ、今頃何してんだろ。生きてりゃいいけど。

 さて、さすがにファルンと違って起こしたら怖いなあ。翼人族とかいうのはともかく剣士なんで、拘束状態でも暴れたらえらいこっちゃ。

 というわけで。


「いただきまーす……ん?」


 二度目のお食事……あれ、こっちは少しぴりっとしてる。人ってーか種族によって違うのかね、味。

 それに何か、さっきと違ってもったりしたものが口に引っかかってきた。グミより柔らかくてぐにゅっとした感じの、変な何か。

 吐き出すのも何だしなあ、と思って歯で噛んで引っ張り出した。ずるずるっと、って音はしないけどそんな感じで。


「こ、コータ様!?」

「え? わあ!」

「ふへ?」


 カーライルと、彼の声聞いて振り返ったファルンが驚くのも無理ねえな。くわえてる俺だってぎょっとしたんだから。

 シーラの口の中から出てきたのは、白い煙……というか綿菓子みたいなものだった。何で感触が柔らかいグミなのかは置いといて、こう三十センチくらいずるずる出てきたんだからそりゃ驚くわ。あと、ぴちぴち動いてるのが。


「うべっ」

「コータ様、離れてください」


 こんなもん食いたくはないから、と吐き出したところでカーライルが動いてくれた。靴でぎたんぎたんに踏んで、ぐりぐりとにじり潰す。

 生物のたぐいではなかったようで、中身がはみ出たりすることもなく綿菓子は綿菓子っぽくふわあと消えた。シーラ、こんなもん中に入ってたのかよ。


「……んん」


 と、さすがにシーラも気がついたようでもそもそと起き出してきたんだが……あれ。


「まあ」

「おや」

「マジか」


 シーラの背中で、大きな鳥の翼がばさりとはばたいた。

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