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057.どうしてお前はそこにいた

「おつかれさんでやしたー」


 結局、ガゼルさんは宿までカーライルを担いできてくれた。シーラが「自分が運びます」って申し出たんだけど、「さっきの連中の仲間が出てきたら、シーラさんの方が強いですから」なんて理由で断られた。まあ、確かにガゼルさんよりシーラのが強いだろうけど。


「アムレク坊も置いて行きますんで、しっかり見てやってくださいっす。一応、俺外にいてますんで」

「ありがとうございます」


 ファルンに頭を下げてもらって、ガゼルさんには引き上げてもらう。……外にいる、ってことは完全に帰る気はなさそうだけどな。


「見張り、ですかね……?」

「まあ、当然ですわね。アムレクくんを預かっているわけですから」


 ぷしゅー、とベッドの上に突っ伏してるカーライル、ある程度頭は働くようになったらしい。もうちょっとしたらスープか何か頼んで食わせよう、とふと思った。


「状況からすると偽スカラの共犯、と思われても仕方ないしな」

「きょ、きょうはんじゃないです」


 当のアムレクは、椅子にちょこんと座って小さくなっている。シーラに軽く見られたところでびくっと震えてるのは……あれかなー、肉食の鳥に睨まれた獲物かっこ文字通りの意味で、ってやつか。


「共犯ではない、というなら、なぜスカラに力を貸していた? 答えろ」


 まあ、こちらとしては事情がさっぱり分からないままに偽スカラの髭面親父ぶっ飛ばしたもんで、シーラの疑問はもっともである。

 その問いに対するアムレクの答えは、すごく善良な市民のものだった、まる。


「はんつきほどまえに、おなかすいてころがってたら、スカラさんにごはんもらいました。それで、おれいにおしごと、てつだってました」

「半月?」


 多分、俺がこっちに来たくらいのタイミングだな、それだと。ま、そこら辺はあまり関係ないと思うんだが、それはさておき。


「……ということは、途中でスカラが入れ替わった可能性があるな」

「つまり、本物のスカラさんにお世話になってたから、ということですわね」


 シーラとファルンの会話でなるほど、と思う。

 本来のスカラが、腹減ってひっくり返ってたアムレクを哀れに思って保護した。そのお礼にアムレクは、教会の仕事を手伝った、と。

 ミンミカの兄であるからしてアムレクもマーダ教だと思うんだが、それはそれとして助けられたお礼をするのは問題ないよな。なにせ、マーダ教信者だなんて口が裂けても言えないことだし。


「スカラの入れ替わりには、気づかなかったのか?」

「すうじつまえから、なんかこわくなった、です。でも、わるいやつら、あばれてたから、それでかなって」

「そこで入れ替わったようですわね」


 ファルンが、アムレクの証言を書き留めている。安上がりなごわごわの紙だけど、メモしとくにはこれで十分だ。

 悪い奴らってのは、多分とっ捕まったマーダ教信者どもだろう。……俺の名前傘に着て悪さしてたとかかな。合流しなかったアムレク、偉い。


「それで、あの」


 そのアムレクが、おずおずと俺に視線を向けてきた。ん、と首を傾げると、彼はミンミカと視線を交わす。


「コータちゃま、で、いいのかな」

「ミンミカは、そうよべと、いわれたです」

「俺のことか? いいよ、ミンミカと一緒で」


 まあ、呼び方で邪神だとバレるよりはよっぽどいいもんな。だから、俺は許可を出した。で、どういうことかな、ミンミカ?


「おにいちゃんに、コータちゃまのこと、おはなししたです」

「アルニムア・マーダさま、ほんとう、ですか」


 そこか。

 ぶっちゃけ、俺が邪神アルニムア・マーダだと証明する手段は何もないんだよなあ。シーラが証言してくれたくらいでさ。

 素直にこれは、答えるしかないな。


「一応、そういうことらしい。俺自身には記憶がないから、証明することはできない」

「そう、なんですか」

「そこのシーラが『剣の翼』ルシーラットだから、彼女に聞いてくれたほうが早いぞ」

「ぴっ!?」


 俺にビビらなかったのは、多分外見上どう見てもただの獣人系ロリっ子だからだろう。けど、シーラの正体教えるとさすがにアムレクは垂れ耳ぴんと伸ばしてぶるぶる震えだした。いや、さすがに食わない、よな?


「案ずるな、コータ様の敬虔なる信者アムレクよ。この御方は我らが崇めるべき神、アルニムア・マーダ様に間違いない」

「は、ははははいっ!」


 あ、椅子から飛び降りて土下座した。……しかしシーラ、お前自信持って言ってるよなあ。

 まあ、カーライルが頑張った結果でもあるんだけど、さ。

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