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050.街の外れの寂しい墓場

 ふと、ガゼルさんと目が合った。赤い髪よりも濃いけどやっぱり赤い目を細めて、白い歯むき出しにして笑って。


「角、可愛いな」

「あ、ありがとうございますっ」


 うわ、角褒められたの初めてじゃないか? ちょっと嬉しいぞ、これは。

 思わず尻尾の動きが早くなったのを見てか、慌ててカーライルが俺を抱き上げる。あ、ミンミカがふてくされたぞ。


「こ、こら」

「おわっ」

「おっととと」


 大急ぎで割り込んできた残念美形に目を移して、ガゼルさんはあ、やべえという顔になった。

 どういうふうにやべえ、なんだろう。


「失礼しましたっす。お父さん」

「おと……」


 ああ、保護者に怒られると思ったわけね。うちの面子で外見も中身も野郎なの、カーライルだけだもんなあ。

 それがロリっ子連れてりゃ、お父さんと思っても……種族違うけど大丈夫、なのかね。やっぱり養子取ったり、とかあるんだろう。

 ただ、カーライルは子持ちに見られたのがショックだったのか固まってる。それでガゼルさんも、気づいたらしい。


「あれ、違うっすか?」

「保護者ですが、父親ではありませんの。まだお若いですから」


 思わず口を挟んだファルンに、うわあマジかと顔をひきつらせた。「おうい、謝っとけよー」とさっき受付してくれたおっさんに軽く突っ込み入れられて、ガゼルさんは小さく頭を下げてくれた。


「おう、こりゃ失敬っす。じゃあ、お兄さんで?」

「それでお願いします」

「わかったっす」


 まあ、外見ロリっ子だけど中身はカーライルとそんなに変わらない俺としても、こいつをお父さん扱いされるのは何というか、困る。まだお兄さん扱いならマシ、なんだけどな。


「じゃ、行きましょっか」


 『お兄さんとロリっ子と女の子たち』と理解したのかな、その連中をくるりと見渡してガゼルさんは、あっさりとそう言ってくれた。




 墓地は本当に、エンデバルの街の端っこも端っこにあった。近くに下水用の排水溝があったりして、あまり環境は良くない。

 日当たりも良くないので、寒々しい雰囲気である。あ、墓は塀とかと同じ石でできてるようだな。

 で、その墓地の入口に建ってる小さな一軒家まで来て、ガゼルさんが「これが墓守の家っす」と教えてくれた。


「今は代役がいなくて、俺ら衛兵が交代で見回ってるっす」

「新しい墓守が来るまで、どれくらいかかるのですか?」

「お兄さんも気になるっすか? ま、この辺はマール教の都合にもよるっすからねえ。うちの隊長なんかは半年で来れば早い方だ、つってましたけど」


 墓守派遣もマール教かよ。もっとも、お墓なんて俺の知ってる範囲だとお寺とかにあるわけだし、だったら宗教団体側がそういう権限持っててもおかしくないのか。

 けど、半年はないわ、半年は。もうちょっとさっさと仕事しやがれマール教。敵だけど。


「室内はさほど荒らされておりませんわね」

「おかねとか、たからものとか、さがしてないの?」

「墓守に、そこまで余裕はないかと」


 あっちでいうところの1K、て感じかね。ほんとに必要最小限の設備と家具しかない家の中はシンプルで、ファルンとミンミカの言葉にはそもそも荒らすもんも探すもんもねえよというツッコミを進呈したい。

 要するに、シーラの突き放したような言葉が現実なわけだ。あと、半年で次が来れば早いほうだと言う理由も分かっちまった。

 安月給だから、そもそもなり手がほとんどいないわけよ。それでもなるようなやつって……向こうでいう社畜? 俺みたいな?

 うわー。心の中だけで頭抱えておこう。俺、神様で良かったわ。邪神だけど。


 ただ、入り口近くの床と壁をじんわりと汚している黒っぽいシミを、踏む気にはなれなかった。




「あそこの隅っこが、墓守が埋められてたとこっす。木が邪魔して空き地になってましたし、そもそも見えにくいっすね」


 家から少し離れた、日陰に寂しく生えてる木の根元を指さしてガゼルさんが教えてくれた。それから、ちょっとした事実も。


「殺されてから、半月以上は経ってました。死んだ墓守、あんまり友人いなかったんすよ。ネズミの獣人だったんすけどね」

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