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048.アジト見るには許可がいる?

 エンデバルの教会は、街の中心近くにあった。目の前に広場があって、誰でも入りやすくなってる。

 あと、トンガリ屋根の上にマール教の紋章が飾ってあるあたり、向こうの世界の教会と似てるんだよな。このほうが分かりやすくて、俺にはいいけど。


「邪教の隠れ家は、街外れの墓地の近くと聞いているわ」

「墓地、ですか」


 ここを担当している僧侶はさすがに二人以上いるようで、その中で俺たちの応対をしてくれたのは黒髪のロングヘアに眼鏡巨乳長身ツンツン、と属性マシマシの僧侶さんだった。うっかり吸いたくなった……んだけど、さすがに人が多すぎて無理。

 で、例によってファルンがメインで話をしてくれている。俺はちょっぴり不安げなロリっ子を演じていればいいので、やっぱり例によってミンミカにひっついていた。ウサギ毛はふわふわなので、悪い気はまったくもってしない。


「墓守の方が住まっておられた家を占拠していたようね。あまり墓守は他の人との交流がないから、入れ替わっても気づかれなかったとか」

「なるほど」


 シーラが、少し難しい顔で頷いている。

 ええと、要は墓地がある程度の敷地で街中に存在してて、そこを守ってる墓守さんの家がすぐ側にある。マーダ教信者は、その家を乗っ取ってアジトにしていた、とそういうことか。

 ん、乗っ取られた方はどうなったんだ?


「……あの、元々の墓守さんは」

「守るべきであった墓の下。ここしばらく葬儀がなかったはずなのに最近埋め戻した跡があったから、掘り返してみたら出てきたそうよ」


 俺の疑問を言葉にしてくれたカーライルに、僧侶さんはものすごく不機嫌な顔で答えてくれた。露骨に言ってるわけじゃないけれど、このくらい簡単に分かるって。

 うわあ、殺られちゃってたか。乗っ取るのに邪魔だったから、外に話を漏らされないため、だろうな。

 分かるけどだめだろう……いや、分かるってのも問題か。だんだん邪神化してきてないか俺、まだそんなに時間経ってないぞ。


「墓地と墓守の家を拝見することはできますか? 後々のために、学んでおきたいのです」

「それは構わないわ。衛兵隊の検証は終わっているから、僧侶のあなたであれば同行者の方々ともども見せてもらえるはず。衛兵隊に見学を申し込めばよろしいかと」

「ありがとうございます」


 マール教信者や普通の人達からしてみれば、墓地と墓守の家は邪神の信者が悪事を行った現場なわけだ。

 そこを、学ぶという名目で見てみたいファルンの要望は、簡単に叶えられる。邪神の信者の悪事を目の当たりにして、神に仕える僧侶は神への思いと邪神への怒りを新たにする、そのために。

 当の邪神が目の前にいる角尻尾持ちロリっ子だってこと、本当に僧侶さんたちは気づかないなあ。夜にでも襲って吸うたろか。


「ミンミカさん、だったかしら」

「は、はい」


 そんな事考えてる俺の脳内を眼鏡僧侶さんは読めないわけで、だから俺の背後にいるミンミカにおっとりとした声をかけた。

 兄貴の情報は、ここでは得ることができなかった。だから、僧侶さんとしてはミンミカが落ち込んでいるもんだと思ったんだろう。


「お兄様はきっと、我らが神のご加護のもとに無事よ。自信をお持ちになって」

「ありがとう、ございます」


 垂れ耳をふるりと震わせて、ミンミカは小さく頭を下げた。




「……あんまり、うれしくない、です」

「まあまあ」


 衛兵隊の屯所の位置を教えてもらって教会を出たところで、ぼそりとミンミカが呟いた。根っからの俺の信者である彼女には、サブラナ・マールの加護と言われても嬉しくはねえよなあ。対立してんだから。

 とはいえ、信仰してもらってる俺が与えられる加護、あるんだろうか。自覚がないだけで少しはあるのかもしれないけど、それは言われても分からないぞ。

 カーライルも資料はほとんど持ってこられなかったようだし、あちこちのマーダ教信者から教えてもらったりしないとだめかな。

 なんか、マジでコンシューマRPGのノリになってきた。ラスボスがサブラナ・マールなのか……隠しボスがいたりしてなあ。


「ところで墓地って、街中にあるのか?」


 ゲームならゲームで、行かなきゃ先に進めないところという感じだろう墓地について、仲間たちに尋ねてみた。「ええ」と答えてくれたのはやっぱりファルン。


「田舎ですと村から少し離れたところにあるのですが、こういった街ですと中心部から外れたところにございますね。墓守の家は祈りを捧げる教会代わりとして、そして火葬の場合の焼き場としても使われていますわ」

「なるほど」


 ん、火葬の場合ってことは土葬もあるってことか。あと鳥葬とか水葬……水に流すのは、海の近くとかだろうな。あるとしたら。


「そうなると、墓に納めるのは焼いた骨とかか」

「火葬の場合はそうですね。焼き終わった後、骨や灰を集めて壷に収めます。土葬の場合は埋めて数年ほどしますと骨になりますから、そこから掘り返して骨壷に収めたものを改めて墓に葬ります。そうでないと、街の中が墓でいっぱいになってしまいますものね」

「こういう塀で囲まれた街だと、面積限定されてるもんな」


 だよなー。塀の外に墓地あるんじゃないみたいだし、納骨堂とかそういうような方式にしとかないとマジでパンクするよな。


「そのあたりは、基本マール教もマーダ教も違いはないようですね」

「自分たちの種族では、掘り返すことはしませんね。森の中、木の根元に骸を安置します」

「ミンミカのおじいちゃんやおばあちゃんは、おかのうえにうめました」

「はあ。鳥人と獣人でも、そういうところ違うのな」


 シーラの種族は森の中に置きっぱ、木の根元ということは栄養分になってもらうってことか。

 ミンミカは……ウサギだしな。どうやらアナウサギっぽいし、そりゃ地面掘って埋めるか。

 んで、カーライル。マーダ教でも違わない、ってことはちゃんと葬ってやれてる、ってことか。良かった、なんか安心した。

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