047.おでかけ前の作戦会議
「……結構凹みますね。私だけ男なので、致し方ないのですが」
ほどほどに胸枕を堪能したところで、カーライルに戻ってきてもらった。
のんびりした旅行ではあるけれど、一応目的もあるからな。
カーライルが凹む理由も理解できるし、ちょっとはこいつの気を楽にしてやるためにもさ。
「男の配下も増やしたいんだよなあ。ミンミカの兄貴がちゃんとしたやつなら、俺も助かるんだけど」
「おにいちゃん、きっとだいじょぶ、です」
ミンミカは理由もなくそう言ってくれるけど、俺たちはお前の兄貴に会ったことはないからな。あいにく男なんで、問題があってもぶっちゃけ吸いたくはないし。
これが元々の邪神アルニムア・マーダなら、大喜びでベッドに引きずり込むところなんだろうけどな。
「さて」
まあ、そこら辺俺は無理なんで、話を本来の方向に戻すことにする。相変わらず俺はシーラの胸枕中だけど、これは主としての特権だからな。いいことにする。
「ひとまずの目的は、今も出たけれどこの街にミンミカのお兄さんがいるかいないか、それを探ることだな」
「はいです」
「いなくても、関係する話などが聞ければよいのですが」
ミンミカの兄アムレク。妹と同じくマーダ教の信者で、多分ウサギの獣人。
ちゃんとした俺の信者であれば手早く配下に加え、何かと力になってもらいたいもんだ。主に、カーライルの話し相手とか。
それに、ファルンが言ったとおりもしここにいなくても、何らかの情報が得られればそれに越したことはない。
「すれ違ってたりしたらアレだけど、スラントにはあまり人行ってなさそうだし」
「スラントやナーリアに、いまさら向かう理由が見当たりませんね。カーライル殿のように、コータ様の情報を得ていたのであればともかくですが」
「あれは我が家系の言い伝えを調べて得た情報ですので、私以外に持ち合わせている者はいないと思います」
シーラの言うことももっともだし、カーライルの話もなるほど。つまり、わざわざスラントから向こうに戻る意味はまずない。
アムレクがいるとしたら、こちら側だ。もしかしたら、他の信者たちも。
「やはり、そのあたりは教会で確認してみるのが良いでしょうね」
「そうだよなあ」
エンデバル、この街ではマーダ教信者のアジトが見つかって数名捕縛されている。その情報は、教会に行って問い合わせればおそらく手に入るだろう。
カーライルに頷いてみせてから、俺はファルンに向き直った。教会といえば、どうしても彼女に頼むのが一番手っ取り早い。
「ファルン、何度も悪いけど」
「お任せくださいませ。これは、わたくしにしかできませんもの」
えっへん、と張られたファルンの胸も相応の枕である。ま、そのうち使わせてもらうことにするよ。枕として。
「あ、ミンミカ、いくです。おにいちゃんの、ことだから」
「自分も参る。他に得られる情報や、……買い物などもしておきたいしな」
ここで、ミンミカが同行を申し出るのは分かる。実の兄貴のことだし、心配してたからな。でも、シーラまで手を上げたのは少し驚いた。
驚いたけど、要は街を見たりショッピングしたりしたいわけか、とはすぐ分かった。部屋でむすーとしてても、面白くないしな。
そこら辺はカーライルも理解できたようで、笑いながら「それならば」と口を挟んでくれた。
「どうせですし、全員で参りましょう。街の中を見てみるのも、特にコータ様には良い機会かと」
「そうか。俺、こっちの世界全然覚えてないもんなあ」
「そういうことでしたわね。では、皆さまで街に出ましょうか」
ファルンが結論をまとめてくれた。まずは教会、その後街を探索がてらお買い物、ってところだろうな。
……アムレクほかマーダ教信者、ゲットできるといいなあ。
「ところで、コータ様」
「ん、何? シーラ」
「街に出るのがとても嬉しいようですね。尻尾が元気に振られております」
「え゛」
マジか。しまった俺しっぽあったんだー!




