423.おこらせたらこわいらしい
「おらあ!」
「ぐっ!」
どこか間の抜けた声とともに、サブラナ・マールが拳を突き出してくる。距離があるからパンチは届かないけれど、その拳がぶっ放した光がまっすぐ、カーライルの翼にぶち当たった。
「がああああああっ!」
反撃とばかりにカーライルが、ビームを拡散して放つ。それをすいすいと、まあ上手く避けるもんだ。「ひい」とか「うわ」とか出てくる声は情けないんだけど、的確に最小限の動きでかわしているのが分かる。
「しれっと避けてんなあ」
「それであの態度なのですから、腹立ちますね」
「ほんとに……うぜえええええ!」
「うっひゃあ!」
避けた移動先を狙って、俺も衝撃波を撃つ。が、これまたすいっと避けられた。それであの声かよ、ムカつくー。
「さ、さあ! 早く来い、アルニムア・マーダ!」
「呼んでるし、行くか」
遠距離戦だと、もう埒が明きそうにない。これは距離を詰めて、爪なり剣なりできっちり決着を付けるしかなさそうだ。
「放置するわけにも参りませんから……はああっ!」
「うわあああああ!」
俺に答えがてら、カーライルがまたビームを撃つ。ビビり声上げながら逃げまくるサブラナ・マールの隙をついて、ぐんと前進した。その背中で俺は、剣を抜く。
「ちょろちょろ逃げてんじゃねえやあ!」
「くっ!」
衝撃波ぶっ放しつつ、ついでに剣も振ってみる。届かないけど……と思ったら、剣の動きに同調したのか衝撃波が三日月型になって飛んでった。おお、サブラナ・マールの服の裾がちょっと切れたぞ。
「なに……っ」
「ん?」
うわ、おっさんの顔色が変わった。あれか、ちょっとでも傷が入るとブチギレるパターンか。やべえ!
「貴様あ!」
「うるせえええええ!」
「がああああああっ!」
手からビーム、を両手でやってきやがったから、こちらもカーライルのビームと俺の衝撃波でなんとか対抗する。と思ったら、目の前にガチで怒ったサブラナ・マールのどアップがいきなり出現した。
「その可愛い顔を、ぐちゃぐちゃにしてやる!」
「させるか!」
「ごぇっ!」
伸ばしてきた手が俺に届くより先に、カーライルが首を思いっきり持ち上げた。……要は、顎の下からアッパーを食らった形になるのな、サブラナ・マール。
「こんのお!」
そこでがら空きになった胸元に、剣の切っ先を突き出す。ぶすり、と軽いんだか重いんだか分からない音とともに、それはやつの胴体に飲み込まれていった。




