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421.こっちもなりふりかまわない

「そうか。そなた、勇者か」

「なれば、こちらも名乗らねばなりませんね」


 カーライルから説明をもらったところで、ルッタがフォミノアを振り返る。シーラも一緒になって、翼の勇者を見据えた。


「そうだな。我こそはアルニムア・マーダ様の四天王の一、翼王アルタイラ」

「アルタイラ様の一の配下、『剣の翼』ルシーラット」


 凛とした声が、静まった空に響く。足元では戦の賑やかさが復活していて、アムレクとミンミカの威勢のいい掛け声がそれに交じるように上がってくる。

 そんな中、ルッタとシーラの名前を聞いてフォミノアは、満足げに頷いた。相手にとって不足はない、と思ったんだろうな。


「翼王に剣の翼とは……勇者として、よい敵に巡り会えたものだ」


 剣を構え直し、俺の配下二人……と、多分カーライルをも相手にするつもりか、こいつ。


「同じ翼を二つ名に持つ、翼の勇者フォミノア。いざ、勝負!」

「はあっ!」

「いざ参る!」


 とは言え、今フォミノアが呼んだのは鳥人の二人。故に、彼女たちに勇者は任せることにしよう。カーライルも考えていることは同じようで、この場から動くことはない。

 がん、ぎんと耳障りな金属音が響く。うわ、ルッタとシーラ二人相手にしてフォミノア、一歩も引かないよ、空だけど。剣一本で、二人の攻撃を器用にいなしながらひゅん、ひゅんと斬りつけている。さすが勇者、って言ったほうがいいのかな。

 まあせっかくだし、どうせならやってみる価値はありそうだよな。あの、後ろでのうのうと戦いを見物してる神様相手にさ。


「カーライル」

「はい」

「ここから、サブラナ・マールにふっかけられるか」

「やってみます」


 だからそう伝えると、カーライルは牙をむき出しにして笑った。何だ、お前もサブラナ・マールと戦いたかったのかよ。まあ、自分封印した相手だしなあ。

 そんな事を考えつつカーライルにしっかり掴まると、龍王は一度すうと大きく息を吸った。そうして、ふわりと少し高度を上げて。


「ぐぁああああおおおおおっ!」

「なにっ!」

「ぎゃあっ!」


 なるほど。高度を変えることでルッタたちを避けて、サブラナ・マールだけを狙ってビームぶっ放したわけだ。見事に奴を乗せている鳥人に命中、そのまま落下していく……あ、鳥人だけかよ。


「教主様! 龍王、貴様!」

「ふふふ……私は大丈夫だ。勇者フォミノアよ、戦を続けなさい」

「……はっ!」


 翼もなしにふわんと浮いたままのサブラナ・マールにそう命じられ、フォミノアはルッタたちとの戦闘を再開する。

 そこに、カーライルが追い打ちをかけた。


「もともと我らの目的は、その男を叩き潰すことですからね。そちらはそちらで、楽しくやっていただきましょう」

「まあ、そのほうが良かろう。任せたぞ、クァルード!」

「ちいっ!」


 ルッタが答え、思い切り剣をフォミノアに叩きつけて場所を移動していく。それで、俺たちの前には一人で浮いているサブラナ・マールだけになった。


「サブラナ・マール。さっさとここで決着つけようじゃねえか。せっかく、神様同士がご対面してるんだし」

「はは……そ、そうだな。我らマール教が、負けるわけがないからな!」

「顔ひきつってるぞ」


 ぴくぴくと口の端を震わせているやつに俺がそう言うと、サブラナ・マールは一応顔を引き締めた。ま、逃げ出さないだけマシだな。うん。

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