420.なりふりかまわずやるらしい
「ほう。男の勇者、か」
名乗ってきたフォミノアに対して、カーライルは悠然とした態度を取る。
「まあ良い。そちらの教主の嗜好を今更、とやかく言うような状況ではないからな」
「なんとでも申せ。貴様らの性急な復活に際し、教主様がご英断をくだされた結果だ」
俺が口を挟む状況ではないので、おとなしく二人のやり取りを聞くことにしよう。
と言っても……サブラナ・マールの英断なあ……要は男でも良かった、ってことだろ? 俺が女でもOK、みたいな感じで。
「正直、勇者がおらねばつまらぬ戦いであったところだ。この龍王クァルード、礼を言うぞ」
「な」
にい、と龍の顔で笑うカーライルに、フォミノアが一瞬びくりとおののく。まあ、俺の四天王を正面から見て、その程度で済むんだからさすが勇者ってところか。
「さて。戦の続きだ。行くぞ、フォミノア!」
「来い、クァルード!」
あまり長く話をしても仕方ないということか、さっさと戦いが再開された。がきん、がきんと互いの武器同士がぶつかり合い、また離れる。
動きといい力といい、鳥人が龍王とガチで殺り合えるってのはすごいな。サブラナ・マールの力をもらったから、ってことかね。
しかし、フォミノアは俺のことあんまり気にしてないかな。アルニムア・マーダだってのはサブラナ・マールが言ったはずだけど、案外信じてないかもな。
「結局、俺はカーライルとセットか」
「それで、私は構いませんが」
「お前はそうだろうな……俺もだけど」
最初っから、そうやってこの世界で生きてきた。シーラと……今はどっかにいるだろうファルンと一緒に旅をして、信者見つけて、下僕作って。
最後というかこの戦闘を、こいつと一緒に戦うのは悪くないな。俺一人だけじゃ、多分勝ち目ないから。
「行くぞ、龍王!」
「はあああああ!」
あ、フォミノアじゃない鳥人たちがこっち突っ込んでくる。衝撃波で撃ち落とすか、と俺が構えたその時。
「はあっ!」
「たあっ!」
ずば、どばっと肉を断つ音がした。そうしてあっちの鳥人たちが落下していくのと入れ替わりに、一度俺たちより高い場所へ舞い上がった鳥人が、二人。
「アルタイラ、ルシーラット!」
カーライルが、二人の名前を呼ぶ。うは、下片付けて来たのかもしかして、と視線を落とすとまあ、すごいことになっていた。……大丈夫かマール教、数揃えてもこの惨状はひどいぞ。
「バングデスタ様、アムレクやミンミカと協力して下は大体終わらせました! 助太刀いたします!」
よく見るとシーラ、結構血まみれだし。下で奮闘したんだろうな、と思う。つか、スティにアムレクにミンミカ? もうこんなところまで突出してきてたのか、あいつら。無謀すぎるだろ。
一方ルッタの方は、慎重に敵を見つめている。カーライルを振り返り、声をかけてきた。
「クァルード、あれは勇者か」
「らしいですよ。サブラナ・マールも手段を選んでいる余裕はなかったようです」
「なるほどな」
さらっと流して答えたカーライルに、ルッタは少々顔をしかめて頷いた。まあ、人の考え方はいろいろあるしいいけどな。




