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416.戦の只中で思うこと

 空を飛び、真下にマール教の軍勢を見下ろす。下からひゅんひゅんと矢が飛んでくるけれど、今いる高度までは届かないようだ。カーライルが、高度を計算して飛んでいるらしい。


『うぉおおおおおおおおおおおお!』


 多分こちらを見てるんだろう、軍勢が挙げる声が地響きのように聞こえる。今いるの、空だけど。

 まあいい、始めよう。


「カーライル!」

「がぁあああああっ!」


 俺の一声で、龍王が口を大きく開いた。ビームを遠慮なく、まるでホースで水撒きでもするみたいに眼下の軍勢にぶちまけていく。

 それまで整然と行進していた軍勢が、途端に蜘蛛の子散らすようにばーっと逃げ始める。……これで勇者の一人もいたら、そうでもなかったんだろうけどな。


「ルシーラット、行くぞ!」

「はい、アルタイラ様!」


 そこに、追い打ちをかけるように鳥人の二人が舞い降りる。既に地面の上は見事なスプラッタ状態で、何とか逃げられた兵士たちを二人が剣を振るい、倒していっている。

 ……しかし、あれを見てもあんまり心が動かないの、やっぱり邪神だからかなあ。もうちょっとビビってもおかしくないんじゃねえか、と自分で思うよ。


「いかがなさいました?」


 高度を少し上げて、カーライルが肩越しに尋ねてくる。俺がおとなしくなったから、何考えてるんだって思ったのかな。


「いや……俺、こういう戦初めてに近いだろ」

「そうですね。昔のご記憶がない、とのことですし」

「それなのにさ、マール教の軍勢が薙ぎ払われてもなんとも思わないんだよな」

「……そのほうが、よろしいかと」


 だから素直に今の心境を述べたら、そんなふうに言われた。はて、何でだ?


「敵の首魁が出てきていることが分かっている、大戦です。そこで不安に心を動かされては、こちらの士気に関わります」

「……そっか」

「正直、私としましてはいきなり戦場にお出しすることに不安があったのですが」


 ぽつん、と呟いてから、カーライルはまたビームを吐き出した。うわあ、マール教軍どれだけ連れてきてるんだよ、あのペド神。

 て、今お前、何て言った?


「戦が終わった後でお心が動かれるなら、それでも構いません。今は、そのままでいてください」

「……ん、頑張ってみる」


 要は、戦争始まってんだからビビるな、ってことなんだろうな。うん、と拳握って気合を入れて、それから前方の地上に目を張る。


「んー」

「コータ様?」

「サブラナ・マール探してんだけど、いないなあ」

「もっと後方かもしれませんね」


 カーライルの言う通りかもしれないな。今見えてるのは縦に長く伸びた、ただの軍勢だ。これは地理の関係で仕方がないことなんだけど……というか、こっちに四天王がいること計算に入れてるか?

 ……サブラナ・マールなら入れてる可能性はある。とすると、やつは何処にいる?


「……!」


 突然、カーライルがぐんと横に曲がった。慌ててしがみつく俺を余り気にすることなく……いや、気にする余裕などなかったろう。

 だって、たった今までカーライルが浮いてた場所に、上から太い雷が降ってきたんだから。


「上ですか!」

「マジか!」


 二人同時に上を見上げると、大きく広がる鳥人の翼。その上に誰かが乗ってるのが、なんとなく見える。

 そこにいたか、てめえ。

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