415.いよいよ戦に飛び立つか
「マール教先陣、視認できました!」
「おう、見えた。各隊、配置についてくれ」
高い建物からの見張りの声に、俺が答えた。
配下の部隊にはまず、弓矢を使わせて遠距離攻撃で敵の数を減らしてもらう。後ろまでは届かないから、そっちの方で俺や飛べる四天王が暴れる予定だ。
「カーライル、ルッタ、シーラで上から攻撃。本隊の数を減らす」
「アタシは下でいいんですかい?」
「ああ、スティは好きにやってくれ。こっちの本隊は柵越しに弓矢で攻撃、先鋒の数を少しでも減らすことに集中してくれ」
「分かりました。聞いたね、あんたたち!」
『はっ!』
スティの実力は分かっているから、マール教の只中に単騎突入させてもまあ、大丈夫だろう。上には俺たちがいるし。
「カーライル、最初に薙ぎ払え。その後をルッタとシーラに任せる」
「承知」
「分かりました。数を減らすにはクァルードが最適ですし」
「取りこぼしはお任せください」
カーライルのビームである程度数を減らしてもらって、パニクったところを鳥人コンビに暴れてもらう。あっちに弓矢部隊がいたらちょっと厳しいかもしれないけれど、そのへんは何とかしてもらう。すごく大雑把だな、我ながら。
と、シーラがはいと手を上げた。
「サブラナ・マールはいかがいたしましょう」
「数が減るまで出てこない、とは思うけど。出てきたら知らせてくれ、俺とカーライルで向かう」
「承知しました。ルシーラットも良いな」
「もちろんです」
あの野郎、昔のことなんてろくすっぽ覚えちゃいないけどなんとなく、そういう行動パターンな気がする。今回の戦争でも、今になるまで神都サブラナの奥の奥にいたわけだし。
現在、先頭や中心部にいるわけではないらしいので、おそらくは最後方からのんびりと、俺たちの戦いを眺めるつもりだろう。まあ、空への対策は取ってる気がするけどな。この前、カーライルが上からビームやったわけだし。
で、そいつのところに向かうのに、俺はカーライルを使う。そうでなければ、こんなちびっこがたどり着けるわけないからだ。
だから、視線を下ろして龍王に、神として命じた。
「最初からの付き合いだ。最後まで付き合ってもらうぞ、カーライル」
「光栄です。サブラナ・マールとの戦のお供に、私をご指名くださるとは」
龍王の口の端が、ぐいと上がる。牙がちらりと見えるのが、いかにもドラゴンだよなあ。
にしても、俺を復活させてくれた残念イケメン神官が、実は四天王の龍王か……世の中、わからないもんだよな。
そんな事を考えていたら、スティがパンと自分の手を打った。
「では獣王バングデスタ、ひと足お先に参ります。ご武運を」
「ああ。頑張って勝ってこい」
「はっ」
俺に向かって一度深く頭を下げて、それからスティは地面を蹴った。大きく飛び出して行く彼女を追うように、他の四天王やシーラが吠える。
「翼王アルタイラ、参る」
「『剣の翼』ルシーラット、参ります」
「龍王クァルード。アルニムア・マーダ様と共に、出る!」
「アルニムア・マーダ、コータ、行くぞ!」
なんとなく昔見たロボットアニメみたいだなあ、なんていう掛け声と共に俺たちは、空へと飛び立った。




