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414.戦の前に演説を

「コータ様」


 スティが、建物の向こうに視線をやりながら俺の名を呼ぶ。なんとなく、言いたいことは分かっていて俺は、それを待った。


「信者たちに、ぜひともお言葉を賜りたく」

「うん。……こういうスピーチってやったことないんだけど、大丈夫かな」

「コータ様のお心をそのまま言葉にしていただければ、問題はないかと」

「そっか」


 スティがそういうんなら、そうなんだろうな。もっとも俺は、心にもないことなんて言えないけどさ。


「じゃあ、今すぐか?」

「そうですね。カーライル」

「分かっております。スピーチの舞台はお任せあれ」


 ん? 何でカーライルが頷くんだ? 演説するの俺だろ、と思ってたらスティがひょいと俺を抱え上げた。そうして、カーライルの肩にある俺の座席に立たせる。


「コータ様はお小さくていらっしゃるので、こうしたほうが皆にお姿が見えやすいかと」

「あ、あー」


 そういうことかあ。ま、しょうがないよな、獣人ロリっ子は。




「総員、静まりな!」


 広場にみっしりと集まってくれている、俺の配下となって戦ってくれる人たち。その前でスティが、大声を張り上げた。


「これより我らが神、アルニムア・マーダ様よりお言葉がある。全員、心して聞け!」


 その言葉にざわり、と人々が揺れる。ま、そうか。信仰してる神様が直接出てきてお話する、ってことだものな。

 当の神様が俺、ってのがちょっと不安だけどと思いながら、俺を載せたカーライルがしずしずと進み出た。

 うん、皆が騒がしかったり顔を見合わせてたりするのは分かる。カーライルのことを俺だと思ってるのか、それとも俺がちびっこなんで戸惑っているのか。

 ま、どっちでもいいや。


「俺が、アルニムア・マーダだ。お前たちの間に伝わる姿と違っていたりして、困惑していることと思う」


 カーライルが首を下げたところで、精一杯声を張り上げて今の名前を名乗る。更にざわめく観衆を見下ろしながら、言葉を続けよう。


「前の戦で、サブラナ・マールとの戦いに敗れた結果がこの姿だ。四天王たちの尽力により何とか復活して今、俺はここにいる」


 あ、ガゼルさんみっけ。前に会ったときよりがっしりした感じになっていて、いかにも戦士って雰囲気をまとってる。俺を見て目を丸くしてるのはまあ、しょうがないよなあ。


「先に言っておく。これからやってくるマール教の軍勢の中には、サブラナ・マールの姿が確認されている。世界でどれだけ盛り上がっているのか俺のところには伝わってこないが、これが実質決戦だと言っていい」


 ざわざわが大きくなった。知ってた、って顔のやつもいればびっくりしてるやつもいるから、ある程度は知られた情報なのだろう。ま、隠してても仕方のないことだ。どうせぶつかるの、俺だろうし。


「安心して欲しい。俺が、サブラナ・マールと戦う。前の俺自身の敵討ちでもあり、マール教の支配下で差別され苦労した俺の信者の敵討ちでもあるからだ。お前たちには四天王のアルタイラと、そしてバングデスタがついている。怖がることはない」


 敵の神には、神が当たる。そう、俺は宣言する。ただ、その後は……うん、これから戦争なんだから仕方ないというか。

 にしても。実際に戦ったことなんてほとんどないのに、変に心が静まっているのは前にも戦争やった神様だから、なのかねえ。変にパニクるよりはよほどいいんだけど。


「俺のところに集まり、剣をとった皆には礼を言いたい。ありがとう。俺に言えることは一つだけだ。ただ一度、俺のために戦って欲しい。頼むぞ」

『おおおおおおおー!』


 かっこつけた台詞で、演説の幕を閉じることにする。長々言ってたって、どうせ耳には残らないし。ただ、皆のテンションを打ち上げる役には立ったようだ。

 もし、神の加護というものがあるのならば。

 ここにいる皆に、全世界にいる俺の信者たちに力を、守りをやりたい。

 少しでも、犠牲が減りますように。

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