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403.中に入ってどんどこ進め

 ミンミカが先頭、アムレクが最後尾を務める形で俺たちは、扉を開けて中に入った。薄暗いけれど途切れることのない明かりが、廊下を点々と照らしている。


「行くぞ」

「はーい」


 ミンミカは垂れ耳と鼻を精一杯働かせながら、慎重に先へと進む。既に作ってあるマップを頼りに右、左とファルンが指示を出してくれる。

 しばらく進んで、ふと立ち止まった。全員が、同じ考えだったのだろう。代表して、カーライルが言葉を落とす。


「……人がいなさすぎますね」

「やっぱり、そうだよな」

「普通でしたら、内勤の僧侶と出会ってもおかしくありませんわ」


 俺が頷いて、ファルンが言葉を続ける。

 ここは神都サブラナの中心、マール教の中心だ。当然、勤務していたり関わっていたりする人数は膨大なはずで、それはこんな夜遅くでもさほど変わるもんじゃないはずだ。

 それなのに、俺たちは衛兵以外、人に会っていない。建物に入ってからは、全く。


「このまま、すすみますか? かえりますか?」

「進もう。どうせ、敵の懐だしな」


 ミンミカに聞かれて、即座に答える。いやもう、どうせ敵に包囲されたりだの何だのっていう状況推測はとうにできているわけで。

 このまま進んで、教主なりサブラナ・マールなりの顔を見ていかなければ何と言うか、気が済まない。


「……本当は、さっさと逃げ出すべきなんだろうけどな」

「お気になさらず。教主の顔を見たいのは、我らとて同じです」

「わたくしも、教主様には直接お会いしたことはございませんものね。ぜひ」


 俺のわがままなのに、カーライルもファルンもついてくると言ってくれる。


「おそとでシーラさまやレイダさまがまってるから、ぼくたちだいじょうぶですよ」

「ミンミカのキックで、ちゃんとにげられるからだいじょうぶですー」


 ……あー、お前らはいつもそうだよなあ、と何か思うけど。でもアムレク、ミンミカ、ありがとう。


「変身も考慮しとけよ。カーライル」

「無論です」


 ここで龍王クァルードの正体をバラすのも悪手だとは思うが、その手を使わなければならないかもしれない、という状況だけは皆把握している。それで、そのまま俺たちは、進んでいく。奥の、奥へ。

 やがて、大きな扉の前に到着した。覚えていないけれど、何となく分かる。

 ここは、俺の玉座があった場所。今はマール教の教主が詰めている、執務室だ。


「なか、ひと、います」

「そうか」


 ミンミカの報告に、やはりなと思う。

 聖教会の中から人を減らして、やつは俺たちを待ち受けているのだろう。

 ああ、今入ってやるさ。


「開けてくれ」

「はーい」


 あくまでも軽いノリのミンミカが、扉を開けた。その中、いかにも高そうな家具が並べられている執務室の奥、大きな机の向こうからその男は、にっこりと笑ってこちらを見ている。中年とも青年ともいい難い、中途半端な外見の、それなりにイケメンの男。


「やあ。いらっしゃい、アルニムア・マーダ」


 その声にちくり、と何かが閃く。遠い遠い昔、その声を、俺は確かに聞いた。


「……てめえ、サブラナ・マールか」

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