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039.裏の稼業と諸事情と

「それじゃ、いただきまーす」

「んっ」


 シーラがしっかり捕まえていてくれてるので、俺は遠慮なく姐さんの厚ぼったい唇に噛み付くように吸い付いた。そのまま、一度勢いよく吸い込む。あんまりもがくなよ、一発で決めたいからな。


「んー! んふ、んーっ!」

「んぐ」


 喉を通る精気の感触、やっぱりいいなあ。思ったより甘い……柑橘系というか、大人な感じ?

 そうしてお返しに、とばかりに俺の気をふうと吹き込む。もがもが、ともがいていた姐さんの動きがすうっとなくなったのを確認して、俺は彼女から離れた。


「ごちそうさまでした」

「……おそまつ」


 シーラも、彼女を解放した。姐さんは床にべたんと座り込んで、ぼんやりと俺を見つめている。周囲にカーライル以外皆いるから、まあ大丈夫だろう。


「これから、俺の指示に全て従え」

「もちろんだ。何でも聞いてくれ、ご主人」


 様のつかないご主人、か。こういう呼ばれ方もいいかな、と思いながらまずは個人情報から尋ねよう。この世界、個人情報保護法なんて無かろうし。


「お前の名前と、仕事として何をやっているのか教えろ」

「あたしの名前はアンディス、という」


 アンディス、と名乗った姐さんは「仕事は見ての通り、人を売ってるんだよ」と当たり前のように答えた。


「うちの家は獣人奴隷を商ってたんだが、最近は需要が減ってね。マール教の教会やお金持ちから、獣人でも何でもいいから女を、たまには男を用立てて欲しいって裏の稼業を始めたら、それなりに忙しくなったのさ」


 なるほど。元々獣人を奴隷として売買してたから、それが他の種族に広がっただけで特に悪いとか思ってない、ようだな。

 ただ、裏の稼業と言ってはいるから世間的には悪いってことなんだろうな。


「マール教の僧侶でも、商品にするのか?」

「逆に、需要が高いんだよ。修行に出る僧侶は基本的に生娘ばかりだし、旅の途中で行方知れずになるやつも多いからね」


 あ、今ものすごくファルンがいやーな顔をした。シーラは呆れ顔で、ミンミカはふうんと言った感じ。この辺、元々マール教とマーダ教の違いかな。

 それはそれとして、マール教の教会相手に僧侶を売ることもあるのだろうか。いや、売りに出す時点で僧侶というのはもみ消されたりするんだろうな。買った教会側がもみ消したりするかもしれないし……外聞が悪い、なんて理由で。

 ところでマール教って僧侶ほぼ女のはずだけど、女買うのか? 雑用係とか周囲の住民用とかか? ……そのうち大きめの教会にでも入り込んでみるかな。

 ま、先の話は置いといて、次に進もう。


「明日、引き取りに来るって言ってたな。誰だ」

「仲介の人買い屋だよ。ただ、官憲に目をつけられてるからそろそろあたしも手を引こうかな、と思ってる相手だけど」


 そりゃまあ、人を売るんだから買う相手がいるよねってことで、仲介の業者がいるのも納得だ。

 ただ、官憲って警察とか軍とかそこら辺だよな。確かに目をつけてくるのは分かるけど、マール教が噛んでるとなるとその辺りのお目溢しはあるんじゃないのかな。


「何でまた」

「官憲共が、きちんとお仕事をやっていますよということを世間に示すため、だろうねえ。かわいそうだが、生贄だよ」


 しれっと抜かすアンディス姐さん。あーあー、そうやって他の大多数から目をそらさせるわけか、マジで生贄だな。

 時々、適当に仕事ができなかったりヘマをやらかしたりした連中を吊し上げて、仕事をきちんとやってるふりか。

 ……そんな事できたら俺、あっちの世界で苦労しなかったぞこんちくしょう。今頃あの会社どうなってんだ、潰れてろー。


「あたしたちも流れで目をつけられたらまずいからね、この仕事が終わったらトンズラする予定だった」


 まあ、そんなこと心の中で叫ぶ俺の声は聞こえないので、アンディスの話は続いていた。

 それで、山奥の古い砦を使っていたわけか。やばくなったら高跳びするために、町中にアジト持つよりはこちらの方が楽だもんな。牛車なんかも自前で持っておかないと、急な移動のときは大変だろうし。


「よくわかった。ありがとう」

「気にしないでおくれ。ご主人の命令だからね、当然さ」


 あー、こういうタイプで良かった。ネッサみたいな実はどえむですー、なんてことになってたらもう、なあ?

 ともかく、おとなしく命令聞いてくれてるうちに話を進めよう。……もしかしたら、時間制限とかあるかもしれないし。


「まずは、俺たちと一緒に来た男、カーライルを解放してここへ連れてこい。今すぐ」

「承知、しばしお待ちあれ」


 そういうわけで、俺は最初の配下をさっさと助けてもらうことにした。一応ファルンはこまめに吹き込んでるから、大丈夫だとは思うけど。うん。

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