396.昔の夢と今の理由
「……なんつー夢、見たんだけど」
「それは……」
大変寝覚めが悪かったので、飯に行く前に配下たちにこの気持ち悪さをおすそ分けしてやることにした。あー気分悪い、何で俺が敵の神に迫られにゃならんのだ。
で、全力で話したわけなんだけど……転生組が揃って眉間を押さえているのはさて、何故だろう。
「それは恐らく、本当にサブラナ・マールその者のやらかしたことですね」
「え」
転生組を代表して、イケメン顔をひきつらせたカーライルが答える。おいおいおい、それってどういうことだよ。
「ていうか、何。奴、俺に迫ってたわけ?」
「まあ、そうなります」
「やってたねえ……」
「自分も存じております」
マジか。サブラナ・マール、本気で俺に迫ってたのか。アホか。というか、気に入った相手に戦争けしかけて、その結果がこれか。
「そのくせ配下の我々には殺意マシマシでしたしねえ」
「それで好かれると思ってんのか!」
肩をすくめたカーライルのセリフに、思わずテーブルをぶん殴る。いてて、とダメージを食らったのは俺の拳であった。まあ、お子様ボディだしなあ。
「……どうして、サブラナ・マールはミンミカたちとせんそう、するですか?」
「そうだね。コータちゃまがすきなら、なんでいくさになるのかな」
ウサギ兄妹が、大変に単純な疑問を転生組にぶつける。俺も当時の状況を覚えてないわけだし、誰か知っているなら教えてくれ。
「自分たちも詳しくは知りませんが、噂では振られたからとか何とか」
「戦争起こせば俺がてめーのもんになると思ってんのか!」
シーラの返答に即ツッコミを入れた俺、間違ってないよな? というか、神横暴だな!
唯一のマール教信者、何か突っ込むところはないのか、と思わずファルンに視線を向ける。と。
「さすがにそれはないでしょう、と申し上げたいところなのですが……教主様が教主様ですので、その」
「否定できないってことかい」
レイダ、あっさりと結論をありがとう。というか、自分とこの信者にまでこういう言われようってのはどうなんだ、主神と教主。
「神の御威光、という名目ですがすることはその……そういうことですし。それに、言葉を飾っているだけで要は……お盛んですわね、としか言いようが……」
ファルンの言うとおりだよなあ。理由をつけてるけど結局女の子をベッドに引きずり込んでるだけだし、教主。
で、その教主が信仰している神ってのも…………まあ、そういう信仰を広めてる元なんだからそうなるよな。
「……俺、マール教のトップとは和解できる気がしない」
「しないほうが賢明だと思いますよ。コータ様」
だよねー、と思わずカーライルと顔を見合わせた。しかしまあ、分かりやすくマール教潰す理由が出てきたのはありがたい、かな。




