393.昔の戦のその最後
「せいなるかみとそのちからをうけたゆうしゃは、じゃしんアルニムア・マーダとたたかいました。」
一つのパネルの前で、アムレクが説明文を読んでいる。パネルに描かれてるのはめっちゃ邪神っぽく角を大量に生やした俺の推定図と、白い翼をたくさん背中に付けたイケメン。多分これがサブラナ・マール……てめえ、自分だけかっこよく描かせてんじゃねえよ。
「じゃしんのほんきょちであり、さいごのけっせんじょうであったげんざいのしんとサブラナで、たたかいはしゅうけつしました」
最後の戦いはここ、神都サブラナで行われたらしい。要は俺とサブラナ・マールの一騎打ちみたいな感じだったとか。というか、当時は俺の方の拠点だったんだな、ここ。
『邪神アルニムア・マーダは魂を砕かれ、残された身体は何処とも知れぬ辺境にて封印されたと伝えられています』
パネルに付属した説明の続きを、俺は目で追う。えらく簡素で、別に書きたかねえやなという感じの終わり方だ。
なるほど。ここで俺は、あの聖剣でぶっ刺されて終わったわけだ。残された身体ってこのロリっ子ボディのことなんだろうけど、封印場所わかってないのかね、これ。そっか、ナーリア村の近所のあそこって知られてなかったのか。
そう言えば、魂は砕かれたって書かれてるだけだな。欠片を別の世界にポイ捨てされたところまでは書いてない……ま、そんなの書いたら探しに行く連中がいるから、なんだろうけれど。というかカーライル、よく見つけたな。
ちらりとカーライルに視線を向けるけど、向こうはこっちに気づいてないようだ。後で聞いてみるかな、と思って視線を戻す。
「それで、みやこになったんですねー」
文章を読み終わったアムレクが、何となくつまらなそうな顔をする。ま、うまい飯もないしあんまり面白くないだろうな、お前には。
「聖剣のおかげで戦がそこまで大規模にならずに終結した、ということのようですね」
「まあ、一から都を造るんなら何もないところのほうが造りやすいでしょうし」
シーラとカーライルの会話で、あれと思う……それさあ、最初から何もなかったのか戦争で何もなくなったのかでだいぶ違うぞ、意味。
「ちなみにどっちだ」
「ここにはもともと街ありましたからねえ」
小声で尋ねてみると、シーラの方から答えが返ってきた……つまり後者か。
などと考えていたら、ファルンから追加が来る。
「どちらかと言えば、サヴィッスに近いですわ」
「あ、埋めたのか」
「そういうことだと、わたくしどもは教わっております」
マーダ教の街を埋め、その上にマール教の街を作ったサヴィッス。この神の都とやらも、同じように俺の本拠地を潰して埋め立ててその上に、マール教の本拠地を組み上げたわけか。
「てことは、聖剣も地下か……」
「案外、壁なり床なりに突き刺さったままなのかもしれませんなあ」
レイダの推測が、何となくだけど正解じゃないかなとは俺も思う。そうして、次に抜けたのが勇者とかやるんだぜ、きっと。
ま、いいか。うっかり俺たちに向かって振り回されなければ、それでいいし。
……使われる可能性のほうが、きっと高いけどな。




