380.やることやるなら払うもの
地下の作業場を、覗いてみた。既に地人族を始めとした職人たちがきびきびと働いていて、かんかんという金属を叩く音もそこらで響いている。うん、ガイザス工房がそのまま移転してきた、って感じする。入口にちゃっかり看板掛かってたし。
「おう、嬢ちゃん……っと、コータ様」
俺が来たのを察してか、ガイザスがいそいそとやってきた。相変わらずの作業着姿で、汗だくってことは金属と格闘していたところか。仕事の邪魔して悪かったかな。
「嬢ちゃんでいいよ。別に気にする人がいるところでもなし、そっちのほうが気楽だろ」
「ああ、まあな」
手早く話を終わらせよう、と思ってサクサク進めることにする。呼び名は俺、あんまり気にしないし。
「大雑把なところは聞いた。狙われたのか」
「多分のう。火薬の匂いがして、逃げようとしたところでずどんといかれたわい」
「多分じゃなくて、確実に狙われただろ。発破だとしても、やる前に注意はするもんだ」
「分かってくれて助かるぞ」
本人からの証言だと、報告書より洒落になってない気がする。というかうん、思いっきり殺すつもりで狙ってきたな、敵。
ガイザスは狙ってきた相手が誰かを考えるより、まずは自分たちの安全確保を第一目的として俺のところに逃げてきてくれたわけだ。
それなら、ちゃんと守らないとな。一応神様なんだから、それくらいの責任は当然あるんだ。
「それで、こっちに移ってきたってことは」
「ああ、全力でここの武器を充実させてやる。任せおけ」
「もちろん。そのつもりでここ、準備してたようなもんだしな」
この地下作業場にガイザス工房が入る、なんてことまではさすがに想定しきれなかったけれど、最上の結果だと思う。
城をしっかり守って、ガイザスたちには仕事を頑張ってもらわないとな。あ、仕事といえば。
「後々戦争になったら、武器の修復も頼むことになるな」
「仕事じゃからな。もちろん、給金はそれなりに見込めるんじゃろうな?」
「まあ、いくつか直轄地もできたし。あと、最低でも飯と寝床と材料は何とかする」
「それならまあ、よかろう」
よ、よし。この辺りは後で、カーライルに相談しておこう。飯と寝床と材料はないと生活も仕事もできないんだから、必須条件だけどさ。
しかしそうか、お給料とか考えないと駄目だよなあ……四天王とかも結局、タダ働きさせてるわけで。俺はそんな皆におんぶにだっこでお世話してもらってるようなもんだな。神様って、何だろうな?
俺が何かはともかくとして、だ。金に関して言えばアルネイドとは上納金の契約も済ませてあるし、ちょっぴりならバッティロスからも入る……と思う。あっちは多分現物納入だろうけれど。
材料は……スティに近くの鉱山あるかどうか、聞いてたっけ。カーライル辺りが既に聞いてそうな気がするけど。




