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037.敵を倒すに遠慮はいらぬ

「では、失礼して」


 木の扉の前で、シーラは無造作に足を後ろに振り上げた。そのまま、地面に転がった石でも蹴飛ばすような感じで扉を蹴る。

 ばきんとものすごく耳障りな音を立てて、扉が鍵やら蝶番やらを巻き添えに向かいの壁にぶつかった。少しずれたおかげで、お向かいの扉まで破壊することにはならなかったようである。

 ただし、ちょうど廊下を通っていたモブチンピラコンビの一人が巻き添え食らって潰れてるけど。見回りだろうな、ご苦労さん。


「何だ!?」

「脱走だ」


 もう一人のモブチンピラに一言で答えて、シーラはすばやく飛びかかった。頭を両手で掴んでぐるんと回し、ぼきりと音がしたところでポイ捨てする。


「ミンミカ、姿勢低くして左右確認」

「りょうかーい」


 シーラの指示に従って、ミンミカは地面すれすれにするすると進んでいく。扉から顔出して右、左と確認……垂れ耳がふわふわと音を聞いているのが何か分かる。


「みぎからさんにん、ひだりからふたりくるです」

「右の奴の足を引っ掛けろ。一人でいい」

「はーい」


 そのまま入り口から出ていって、どうやらミンミカは右側から走ってくるチンピラ共の足元に滑り込んだらしい。

 勢いよく走ってくる奴らの足を引っ掛けると、どうなるか。


「がっ!」

「わあ!」

「おいいっ!?」


 すっ転んだ一人目に勢い余った二人目がぶつかって、もつれながら転ぶ。その後ろから走ってきた三人目は、慌てて飛び越えようとして失敗して、反対側からやってきた二人の行く手を邪魔する形になった。


「何だお前らあ!」

「だから、脱走だと言っている」


 右からの三人目を無造作に踏み潰し、足を止めた左側二人の顔面に拳を続けざまに叩き込みながらシーラは、さっきと似た台詞を口にする。いや、そいつら聞いてないから。


「こんな狭い廊下を、群れて来るな」


 転んでいた二人が起き上がろうとしたところを蹴り、踏み潰してから今俺たちのいる部屋に放り込む。扉はもう使えないから、邪魔だからどけたくらいの感覚だな、シーラ。


「では、暴れてまいります」

「てきをさがしてきまーす」

「少し後ろをついていくけど、くれぐれも気をつけてな」

『はい』


 ここでやっと剣を抜いたシーラと、ずっと低い姿勢のままのミンミカがそのまま右の方に走っていった。……もしかして、ウサギ獣人て四足歩行でも平気なのかね。

 そちらの方でドタンバタンと激しい音がしばらくして、その音が遠ざかっていくのを確認してからファルンは俺を促した。


「では、わたくしたちも参りましょうか。コータ様」

「ああ。できるだけ敵に会わないように頑張りたいんだが」

「一応、修行に出ることを念頭に置いて戦の鍛錬はしておりますから」


 のんびりのほほんのファルンにそう言われても、あまり説得力ないんだけどなあ。一応カーライルとはそれなりにやれてたけど、カーライル自身あんまり戦闘経験とかなさそうだし。

 ともかく、行くか。


「部屋にいる方々は、外を見ないようにお願いしますねえ」


 のほほーん、とした感じは相変わらずの声を部屋にかけながら、俺の背中を守るようにファルンが歩く。

 俺たちの行く手には、チンピラどもが鼻折れたり袈裟懸けにぶっ切られてたり両手で股間押さえて悶絶してたりする。ああうん、あんまり見たくないものだろうなあ。シーラ、えげつない。もしかしたらミンミカもやってるかと思うけどさ。


「ファルン、どう思う?」

「この前の腹いせに、やらかしてらっしゃるとは思いますね。コータ様という後ろ盾も得たことですし」

「まあ、この前は一人だったもんなあ」


 ファルンも同じように考えてたので、これは間違いなさそうだなと思う。全部シーラなら、みんな切り傷ばかりだろうしさ。

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