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376.向こうの使者と交渉を

 カーテンの裏で俺は、ファルンと顔を見合わせた。


「暗に、全部返せっておっしゃってますわね」

「だよな。……返してくれる、と本当に思ってるのかね」

「思ってませんわよ」


 きっぱりと言ってのけるファルン。まあ、俺もそう思うんだけどさ。

 当然、こっちも返す気ないし。

 そんな事を考えながら、カーテンの向こうに意識を戻す。スティ、ちらっと見えた尻尾がふしゃーって感じで毛が逆立ってる。さすがは虎、でかい猫。


「それで譲歩した、とでも言うつもりか? そちらの教主は」


 声も、できるだけ抑えてるけど怒りが微妙ににじみ出ているのが分かる。怒ってんなー……いや、俺ももうちょっとしっかり怒ればいいんだろうけれど。俺の方はどちらかと言うと、呆れてるんだよな。


「つまりは俺たちをこの城に孤立させて、その後理由をつけて滅ぼす気なんじゃないのか」

「疑り深いことだ」

「何しろ、俺たちはお前たちのおかげで一度は滅びたわけだからな。そう簡単に信じられるか」

「確かに、そうか」


 そんな俺は置いといて、えーとブラヴィアンはスティの言い分を納得して聞いててくれてる。マーダ教側の言い分をちゃんと聞いてくれるのは、ちょっとありがたいなあ。彼女を使者にしてくれてありがとよ、教主殿。


「ともかく、我らが教主様のお言葉を伝えた。またそのうち、答えを聞きに参る」

「我らが神にお伺いを立てるまでもなく、拒否以外に答えはない。そう、伝えおけ」

「ふむ……了解した」


 ひとまずはどちらかが暴れたりすることもなく、話は終わったようだ。ブラヴィアンが言ってた自分の部隊が動くのどうの、ってのは実際どうだか分からないけれど、そういう面倒事は起こしたくないしな。

 多分、俺が吹き込んだりしても分かる、気がする。サングリアスがバレてないのは行動が基本的にそのままだからなんだろうけれど、わざわざこういうところに送り込んで来たブラヴィアンを、帰った後にチェックする可能性はあるからな。


「次は戦場か?」

「そうでないことを祈るぞ。……我らが神にだが」

「お互い、自分たちの神が喧嘩っ早くないことを祈ろう。なあ、ブラヴィアン」

「そうだな。バングデスタ」


 とか何とか考えているうちに、会話してた二人が別れる。なんだろう、まるで主人公とライバルみたいな会話になってるぞ、お前ら。

 というか、俺は売られた喧嘩は買うつもりだが自分から売るつもりはないからな? 喧嘩っ早いとしたら、サブラナ・マールの方だからな?

 やれやれ、と肩をすくめていると、カーテンめくってスティがこっちに入ってきた。


「……いかがでしたか、コータ様」

「あれで交渉に来たつもりなのか、喧嘩売りに来ただけじゃねえか」

「申し訳ありません。マール教は、自分たちこそが正義だという考えに凝り固まっている者がほとんどですので……」


 俺が素直に意見を言うと、なぜかファルンが困った顔になった……ああ、一応マール教の僧侶のままだもんな、お前。

 とは言え、要は向こうは『親切』で言ってきてるわけだよな。正義の自分たちが、城だけでも残してやるからって。


「こっちが譲歩するにしても、せめてアルネイドくらいは残して欲しいもんだけど」

「聞いてくれるとは思いませんが」

「あ、やっぱり?」

「お城を残すだけでも最大限に譲歩している、とお考えですわ。きっと」


 ファルンの意見、辛辣だけど多分的確だよね。うわあ、やってらんねー。

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