374.戦の準備にすべきこと
城に戻ってから、自分たちの守りを確認するためにカーライルを呼んだ。龍王として覚醒した後も、相変わらずカーライルとしてのお仕事の方がメインなんだよな、こいつ。
まあ、龍王クァルードとしての仕事は敵を脅すか、戦闘かだけど。
「戦闘訓練はどうなってる?」
「それなりには。もともと衛兵だった者や、戦闘に向いている種族の者などはかなり上達しておりますね」
「武装は」
「ドンガタより納入が始まっております。先行品による性能確認も順次済ませておりますが」
「言わなくても良さそうだけど、チェックはこまめにしとけよ。ドンガタの職人たちの腕を疑ってるわけじゃないが、量産するとどうしても手がまわらないところが出てくるからな」
「無論。性能確認と修正のために、職人数名をこちらに常駐させることにしました」
「おー、そりゃ助かる」
いやもうほんと、確認するだけで終わりそうだよね。
カーライルを始めとする四天王や、その他の配下たち……ぶっちゃけこいつら、俺よりよっぽど頭の出来が良いと思うんだよなあ。俺がこいつらの上に立ってるのは、元々が神様だっていうその一点だけで、なんだろう。
「いかがなさいました? コータ様」
「いや、お前らが優秀で俺やることないな、って考えてただけ」
「コータ様が直接お出ましになるときはこちらの大勝か、その逆かですよ」
「……」
その逆……マーダ教の大敗、ってことか。
かつての戦争の最後は、多分そっちの方だったんだろうな。四天王たちも勇者に敗北し、そして出ていった俺も。
……次は、そんなことにならないといいな。難しいとは思うけれど。
「マール教は、大々的に動きますかね」
ふいに、カーライルがそんなことを言ってきた。俺が黙り込んでしまったから、話題を切り替えたのかもしれない。
悪いな、と思いながらそれに乗る。
「今はまだだろうな。勇者の発見と育成がおっついてないらしいし」
ある意味、見つかったらそれはそれでこっちが終わりそうな気がするんだけど。
……あ、でも基本的に女の子なんだよな。サブラナ・マールなり教主なりが、数晩頑張る相手になるんだから。
なら、隙を見て吹き込んでやればなんとかなるのかな? そこまで接近できるかどうかがミソか。
「しかし、発見されれば恐ろしいことになりますな」
「……勇者って、女の子だよな?」
「今までのことを鑑みますと、恐らくは」
一応、昔のことを知っているカーライルに確認してみる。やっぱり、そうみたいだな。
で、そこまで言ってしまってからカーライルは、あっと気がついたように俺を見た。
「……下僕になさいますか」
「そこまで近づくのが一苦労なんだよな。接近さえできりゃ、何とかなると思う」
「いずれにしろ難しいですね……何とか考えてみましょう」
きっぱり言いきられたな。でも、カーライルが接近手段考えてくれるみたいだしどうにかなる、といいな。
最悪は全面戦争で、勢力の少ないこっちが削り倒されて終わるってパターン。
「勇者に接近もそうだけど、神都サブラナに入る手段も考えておいてくれ」
「頭を取るわけですね。分かりました」
勇者を避けて、こっちが特攻するパターンも有りだな、と思って指示はしておこう。
まったく、戦争ってやだやだ。




