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373.この子とあの子で違うこと

 施設を離れ、街の出口へと足を進めながら領主の話を聞いた。街の中は避難民たちで、そこそこ賑やかになってきている。


「念のため、住民たちには自衛のための戦闘訓練を推奨しております」

「まあ、マール教が何してくるか分からないしな。それはいいと思う」


 えい、やあと棒きれを振り回している声が聞こえてくる。まあ、こういう世界だ。自衛のために戦闘訓練やるのは良いと思う。

 でもまあ、自衛するためなんだから戦力としては知れてるんだけどな。めっちゃ戦力になるなら、衛兵としてうちがスカウトしたいし。

 そう、戦はあんまり、一般人を巻き込んでやるもんじゃないと俺は思っている。そういう人たちまで戦争に駆り出してしまえば、俺たちの飯は誰が作るんだよとか誰が運ぶんだよ、なんてことになるからな。

 だから、本当なら戦闘訓練なんてやらなくてもいいようにしないと、な。


「ただ、基本は衛兵に任せろ。避難訓練は?」

「そちらも、もともと衛兵だった者を中心にやってもらっております」

「ならいい。戦力にならない者たちまで戦に駆り出すつもりは、俺はないからな」


 かといって、例えば戦力になりそうだからとジランドやコングラを前線に出す気もないけどさ。あいつらは荷物運んでもらうのが適任だ、と俺は思っているわけだし。


「あなた様にそう言っていただけると、下々の者に対しては大変な説得力となります」

「ん? ……ああ、他にはそういう奴らがいるのな」

「一部の僧侶などが、全ての民は神のために戦うべしと。それを聞いて育った幼子たちが、どうしても影響を受けてしまいますでな」


 僧侶ってことはマール教かよ。マーダ教なら人数が少ないからそういうこと言う奴いるかも知れないけれど、多数勢力がそんなこと言っちゃ駄目だろう。子どもたちなんて、そういう環境で育ったらそれが当たり前だって思っちまうんだから。

 そんなことを考えていたら、ミンミカがはいと手を上げた。


「ミンミカは、つめやキックでたたかえるですよ?」

「まあなあ。俺も助けてもらったことあるし」

「ウサギに限りませんが、中型以上の獣人であれば身体能力が高いですからな」


 ああ、そういう分類があるのか。ミンミカが多分中型だから、大型ってのはやっぱりスティとか、そういう連中のことなんだろうな。

 そうすると、当然小型もいるわけで、つまり。


「けど、チュリシスに武器持って戦えなんつったら無茶だろ」

「あ、それはそうですー」


 小柄だもんな、チュリシスはじめとしてネズミ獣人。あれが小型獣人、という認識でいいんだろう。

 あいつらには戦闘の矢面に立たせるよりも、地面掘ったり連絡役だったり設備整えたりと、そっちのほうが合っている。


「だから、ミンミカにはその分頑張ってもらおう、とは思っている」

「ほえ?」


 そういうことだ。

 ミンミカやアムレクに頭脳労働は無理だし、そういう関係はシーラやカーライルにぶん投げることに既にしている。

 ウサギ獣人は身軽で対人戦闘はわりと得意だからこんな風に護衛をしてもらったり、外見可愛いから装飾品代わりに連れ回したり……酷いな後者。さすが俺、邪神。

 けどまあ、それがミンミカには一番合う任務なんだし。


「今みたいな護衛とか、お前にできる範囲できっちり手伝ってもらうからな」

「もちろんです! ミンミカ、コータちゃまのおやくにたてるように、がんばるですよ!」


 むん、とガッツポーズしてくれるミンミカは、戦じゃなくて俺の横に置いといたほうが良いよな。そう、何となく思った。

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