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036.山の奥にはごちそうよ?

 牛車から降りて、周囲をぐるっと見渡した。古い木造の小屋が一つと、その奥に石造りの砦っぽい建物がちらりと見える。古い時代の遺跡だか何だか、かな。

 で、俺たちを出迎えるように背の高いワイルド系赤毛お姉さんと、分かりやすいモブチンピラが数名やってくる。


「只今戻りました、姐さん」

「野郎込みで四人かい。しかも一人はガキだし……ったく、今日はシケてるねえ」


 商人もどきなおっさんのとお姉さんとの会話で、こいつらの立ち位置がものすごく分かった。

 またボスが女性かー。いや、その方が俺にとっては大変にありがたいわけなんだけど。ごっつぁんになれそうだし。

 過去のアルニムア・マーダがどんな男が好みだったかどうかはともかく、今の俺は絶対女の子から精気吸いたいんだもんな。


「まあいいさ、仕分けて放り込んどきな。明日には引き取りに来てくれるからね」

「あいあいまむ」

「それと、その兄ちゃんも品物なんだから手を付けるんじゃないよ。いいね」

「分かっておりますよう」


 お姉さんというか姐さんの指示に従い、俺たちとカーライルは別々の建物に連れて行かれるようだ。カーライル、ひとまずは無事っぽいけど頑張れ。

 で、俺とシーラ・ファルン・ミンミカはチンピラずに連れられて石の砦の方に進んでいく。カーライルはちらりと見えたけど、砦の外れの方に連れて行かれたようだな。


「悪いなあ。一晩我慢してくれれば、ここからは出られるから」


 チンピラの一人が、にやにや笑いながらそんなことを言ってくる。俺は……不安な顔をできているかな? ま、ミンミカにでもしがみついていれば向こうは勝手にロリっ子が怯えてるもんだと思ってくれるだろうが。

 一晩我慢すれば、ここからは出られる。その先は、おそらくこいつらの取引相手のところに行くことになる。


 明日、引き取りか。つまり、牢屋はいっぱいってことだ。多分。

 多少ゴチになってもいいんじゃねえかな、とふと思った。目が覚めてすぐやったイヤボーンみたいなの、万が一のときに発揮するためにも。

 ……できるかなあ。あれ、完全に無意識にやってたし。




「はい、じゃあ今夜はお休みー」


 俺たちが放り込まれたのは、牢屋というには普通の部屋だった。ただ、入り口についてる木の扉には鉄格子のはまった窓がついてるので、外から中の様子はそれなりに見える。

 廊下を通ってくる途中、いくつもあった扉の向こうからぐすぐすと泣いてる声が聞こえてきてたから、やっぱり結構放り込まれてるな。明日にはこれ全部出荷かよ、ボロ儲け……なのかね?


「だいじょうぶですか? コータちゃま」

「うん、平気」

「自分たちよりも、カーライル殿の方が気になりますが」

「一応、手をつけるなとは言われておりましたけれどねえ」


 扉からチンピラ共が離れた瞬間、俺たちはすっかり普段どおりである。ファルンだけ「こんなことは初めてですから、ちょっと怖いですわ」なんて頬に手を当ててるけどさ。

 しかし、せめて外面だけでも可愛い女の子集団のフリをしておいたほうが、敵は油断するだろうな。よし提案。


「一応、部屋の隅っこに怯えた感じで固まっておこうぜ。その方がごまかせるだろ」

「確かに。では失礼します」

「ほえ?」


 俺の提案に即座に乗ったつもりなんだろう。シーラは俺ごとミンミカをひょいと抱きしめて、そのまま部屋の隅に座る。なお反対側の隅っこにはおまるが置いてあるので、そこは避けた模様。

 ……大きな街まで行けば水洗トイレとかあるらしいんだけど、こういうところだとせいぜいボットンなんだよなあ。俺、神様なせいかあんまり行かなくてすむんだけどさ。

 ま、それはそれとして。


「独占はよくありませんわよ、シーラ」

「それは済まない」


 変なところで張り合うな、ファルン。反対側から腕を伸ばしてきて、正直俺は極楽だ。こういう時はロリっ子で良かったと思うぞ。

 右を見ても左を見ても後ろにもおっぱいだからな! ただしシーラは鎧つけてるから固いけど!

 って、鎧も剣も持ちっぱなしか、シーラ


「……そういえば、武装解除させてねえんだな。あいつら」

「最近はあまりこういうこともなくなりましたから、見掛け倒しの傭兵たちも多いのですよ。コータ様」

「俺の配下侮られすぎー」


 『剣の翼』ルシーラットを甘く見てんだろ、と彼女自身の意見を聞きつつ思ったんだけど、あいつらはそれを知らないからなあ。

 知ったが最後、というか最期なんだろうけれど、うん。


「コータちゃま、あすまでまつんですか?」


 ひとしきりおっぱいを堪能したところで、ミンミカがそう尋ねてきた。「いや」と俺は軽く頭を振って、答えの理由を説明する。


「今晩じゅうにここを制圧して、明日のこのことやってくる取引相手どもを出迎えよう。金なり何なり持ってくるだろうし」

「今後のためには、資金があって困ることはありませんものねえ」

「異議ありません」


 ファルンはミンミカの垂れ耳で遊びながら、同意してくれた。シーラの言葉が少ないのは、いつものことだしな。

 さて、同意が取れたところで、行くか。


「シーラ、敵相手には遠慮なく行け。ミンミカは偵察、ファルンは隙を見てカーライルを助けてやってくれ。あと、ボスは俺が吸う」

「承知しました。自分にお任せください」

「ミンミカ、がんばりますー」

「分かりました。コータ様、ご同行をお願いします」

「おう」


 ……敵ぬっころすことに何の問題もないと考えてるあたり、俺すっかり邪神だなあ。

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