364.麓の街が賑やかで
ルッタとシーラが城を経ったのを確認して、ちょっと衣装を変えてみる。といっても獣人ロリっ子だと舐められるので、フード付きのローブ着て怪しさ大爆発スタイルになったくらいだけどな。
「じゃあ、そろそろ参りましょうか」
「おう、頼むぞー」
肩車してもらう感じで乗ると、その場でカーライルは龍に変化する。そうして背中の翼を何度か羽ばたかせ、空へと飛び出した。
別に空を飛ぶのは、というか飛ばせてもらうのは初めてじゃないし、いい加減慣れてきたようだ。山上にある北方城から連なる道、麓の街まで続いているそれの上をのんびりとカーライルは飛んでいる。
両側には険しい山と、鬱蒼とした森が広がっていて。
「何度も飛んでるけど、いい眺めだなあ」
「コータ様のご命令とあらば、毎日でもお乗せいたしますが」
「それはお前が疲れたり目立ったりしそうだから、程々にな」
「御意」
平和な世界ならそれでもいいんだけど、どう考えても今から戦争になりますよ、な状況だからな。余計な疲れは溜めないに限るだろ。
割とすぐに、麓街が見えてきた。既にルッタとシーラが降りる準備をしているから、距離を置いてカーライルは停止する。
「どうなさいます?」
「しばらく様子見ようか。一応、あっちの主張も聞いておきたいし」
「そういえば、面と向かって言われたことなどほとんどありませんね」
あっち、つまりマール教教育部隊の言い分。ま、どーせ俺たちが街を支配したりしてるから助けに来てやったぞうんたら、とかだろうけどさ。
鳥人二人が降りていくのを見て、カーライルも街から離れたところで高度を下げる。森の梢ギリギリのあたりを、ゆっくりと先に進んで。
一応邪神様やってるせいなのか獣人ボディのせいなのか、頑張って耳を澄ませれば街の中の会話が聞こえる位の距離まではやってきた。さてさて。
「いい加減にしろ! お前たちが武器を振るうから、こちらも応戦しただけじゃねえか!」
「邪神の徒のくせに、偉そうなことを言う! お前たちはこの世界にいてはならん者共だ!」
「なんだとお!?」
「勝手に決めるんじゃないよ! あんたらがそういうなら、喜んでマール教なんか捨ててやるさ! 自分たちを殺そうとした連中に、何でつかなきゃならないのかね!」
……こりゃ、住民と教育部隊の口論か。って、教育部隊が一方的に住民をこっち側と決めてかかってねえか。
「……我々を兵糧攻めにする気ですかね」
「ああ、街抑えりゃモノ入ってこなくなるか」
なるほど、カーライルの推測に納得する。
それにしても、これは悪手だと思うぞ。もうちょっと考えろよ、住民の協力を得られるようにとかさ。
ま、それができれば世界はもうちょっとマール教寄りだったと思うんだが。少しでも俺たち寄りの村や街がある以上、どこかで同じようなことをやっていたってのは想像に難くない。
「双方、そこまでにしておけ。マール教の教育部隊ともあろうものが、無辜の民に武器を振り上げるとは情けない!」
さすがに、元教育部隊のトップだったルッタが、ここで声を上げた。
まあ、元配下共があまりに情けない、とかその辺だろうな。




