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361.昔の彼の思い出を

 ふと、カーライルに聞いてみた。


「カーライル。今なら、戦えそうか?」

「だいぶ鈍っておりますが、龍になればご期待には応えられるかと」


 それはよかった。単純に戦力が増えたから、ってこともあるけど、それ以外にも。


「頼むぞ。正直、ビジュアルで敵の戦意を削ぐのも重要だしな」

「……外見のみなんですか」

「いや、龍だと威圧感あるだろ。そもそも龍人族、あんまり表に出てきてないんだから」


 見てくれ意外と重要。龍人族は俺も今のところ……ヴィオンとカーライルの二人だけか、しか見てないレア物だし。この世界の人間でも、そうそう見たことはないらしい。

 その龍人族が出てきて、あまつさえ龍になってがおーとかやると迫力満点だし。敵を威圧できたり、ぱっと見だけで戦意を削げるってのは少数部隊としては本当、ありがたいことだから。

 ……そういえば、ヴィオンって大きかったよなあ。思い出した。


「ヴィオンがものすごく大きかったけど、あんな感じで巨大化とかはできるのか?」

「やろうと思えば、ある程度は。ただ、元が人間の身体ですから……大型化するだけで体力をかなり消耗しますね」


 ああ、でっかくなれるんだ。とはいえ、困ったという顔のカーライルを見てると確かに、戦地でやるのは得策じゃねえな。

 ……つまりは。


「なんてーかさ、巨大龍モードってビジュアル担当じゃね?」

「……面目ない」


 うん、頭抱えたくなるのも分かる。

 まあ、大きくならなくても龍になればそれで結構戦力になりそうなんだよな。僧侶たちを威圧できる、ってだけでも連中の足止めにはなるし。


「……ヴィオン、ですか」


 と、ふとカーライルがその名前を呟いた。

 俺が、初めて会った龍。過去のカーライル……クァルードの側近だったという、あの龍人。


「お前の逆鱗、守っててくれたんだよな」

「前の戦の折……もうこちらの敗戦が濃厚でした。私も、あと一度戦に出れば恐らくはそれが最後だろう、と」


 思い出語り、か。いいよ、俺は忘れてしまっているから、聞こう。


「もう、鱗もボロボロでしてね。逆鱗とその周辺だけは何とか守っていたのですが、次が最後の出陣になることは自分でも分かっていました」

「うん」

「だから、ヴィオンに命じたんです。私が死んだら逆鱗を剥ぎ取れと……いつか、我らが神が再び世に出るそのときにはその守りとなるように、と」


 その命令を、ヴィオンはずっと守り通した。だから今、俺のそばには前のクァルードの逆鱗がある。


「良い配下でありました」

「そっか」


 自身の遺言をちゃんと守ってくれたヴィオンに対して、カーライルは自信満々の笑顔を見せる。ああ、こういう顔を見るとこいつ、俺の四天王の一人なんだなあと分かるんだよな。普段が普段だし。


「余裕ができたら、東方砦で祈りを捧げたく思います」

「ああ。復活したぞって挨拶に行ってやれ」

「はい」


 ほにゃんと笑ったカーライルの顔は、うん、やっぱりどこか残念なイケメンだった。ま、これでいいさ。

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