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352.森の中までわらわらと

「お前たち、そこで何をやっている」

「む」


 しばらく進んでいったところで、声をかけられた。

 よく見ると、さっきスティがぶち転がしていたのと同じような、男の部隊だ。うへ、複数動いてたのかよ。

 数は……六人てところか。別働隊がいてもおかしくないが。


「クルンゴサからの逃亡者か?」

「そのようだ」

「最近、街から逃げる者が多いというからな。怪しい者は捕縛して連れ戻せ、という通達が来ている」


 連中は、お互いに顔を突き合わせて会話しながら俺たちを取り囲みに来ている。こっちの話、聞く気ないだろお前ら。


「よし、お前たちもクルンゴサまで連行する。おとなしくしろ」


 まあ、結論はそうなるよな。ただ、こちらも今逃げ出してきたところなんで、そうほいほいと帰れるわけもなし。

 せっかくロリっ子スタイルなので、怯える演技をしてスティやシーラの後ろに回ってやる。


「こわい! ……頼む」

「はっ。あいにく、乱暴者の言うことは聞きたくない性分でね」

「自分もだ。二人は下がっていろ」


 小声で頼む、と付け加えたことでスティが牙を剥いたようだ。シーラも剣に手をかけ、身構える。

 二人ってのはこの場合、俺とカーライルだな。では、ロリ演技続行。カーライルにしがみつく。


「分かりましたあ。お兄ちゃん」

「はい」


 カーライルも受けて立つ、とばかりに俺の背を抱えるようにして、一本の木に自分の背中を預けた。


「行くぞ、シーラ」

「分かっております、スティ様」

「抵抗するなら、切り捨てるまでだ!」


 できるだけ固有名詞を出さないように、戦闘部門の二人はお互いを愛称で呼び合う。そして、彼女たちの実力を知らない野郎どもが威勢よく声を上げて、かかってきた。


「はっ!」

「全く、森の中とは面倒なことで!」


 とか言っている割にはスティはすばやく、木と木の間をすり抜けて敵に接近する。上から一人の頭を殴り、昏倒させてぽい。


「森で戦えぬようでは、剣など持たない」


 シーラは身をかがめて一人の足元を蹴り飛ばし、倒れたところを上から剣の切っ先を落とした。多分、殺ったな。


「コータちゃん」

「俺は大丈夫だ。ただ、逃げられないな」

「お二人にお任せするしかありませんか」


 いつでも駆け出せるように立ったままのカーライルと、小声で会話を交わす。俺は衝撃波が一応あるけれど、カーライルはなあ。


「こういうときは、自分が嫌になりますね」

「お前には別の仕事があるだろう。それでいい」

「……ありがとうございます」


 ぽつんと呟いたこいつの声はまるで、早く戦わせろという誰かの声を含んでいるようだった。

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