347.再びの宿も何というか
以前に泊まった宿が部屋が空いていたので、そこに泊まることにする。前金を払ってきたカーライルが戻ってきて「宿代も上がっていましたね」とため息をついた。
「足元見られまくってんなー……だからこそ、観光客も減ってきてんだろうし」
「逃げ出せない客が搾り取られてるって感じですかね。そういう連中も、そのうち尻まくって逃げてほしいですけど」
髪をガリガリ掻きながら、カーライルは部屋へと俺たちを連れてってくれた。前より広い部屋っていうか前室プラスダブルベッドがある部屋って、だからじゃないか? 高いの。前泊まったときは二段ベッドだったぞ。
「いえ。客が減ったので、どの部屋でも同じ値段だと言っていました」
「全力でぼったくりにかかってねえか、それ」
どの部屋でも、なんだから前の部屋の値段も今の部屋の値段も同じで、カーライル曰く高くなってるわけだから。
確かに客が減ってるのはしょうがないけど、残った連中からふんだくるかー。
とはいえ、向こうも先立つものがないと生活が大変だものなあ。そこら辺は、ちょっとだけ同情する。
「まあいいや、一応ここで数日様子を見るか」
ダブルベッドにぼふんと飛び込むように腰を掛けて、そのまま後ろにばたん。うむ、まあまあふかふかだ。……って、俺込みで女三人に男一人、全員ここで寝る……わけにはいかないよなあ。
「私は前室で休みますので、お気遣いなさらなくて結構ですよ」
「おう、助かる」
黒一点のカーライルがあっさりそう言ってくれたので、助かったというか。
……中身はまだまだもとの俺のつもりなんだけど、多分変化してるんだろうなあ。すっかり邪神ムーブに慣れてきてるし。
それはともかく、マール教を相手に、か。様子を見てみて、こちらも動きをはっきりさせないとな。
「最悪はシーラとスティに暴れてもらうけど、そんな事にならないようにできればいいな、とは思ってる」
「そうですね。……なんとなくそうなりそうな予感がしますが」
「俺もそう思うんだが、悲観的ですかね」
「楽観的よりは、状況を考えればマシなのではないかと」
うん。カーライル、スティ、やっぱりそう思うよな。シーラの考え方が、今の状況では一番いいと思うんだ。
あちこちにマーダ教シンパがいるけどさ、まだまだ四面楚歌状態なわけだし。
「で、万が一の脱出のときはさっき言った通り、俺がシーラと一緒に逃げる」
「私はバングデスタ様のお手を煩わせることになりますね」
俺はロリっ子で軽いから、シーラに頼んで空に逃げる。向こうが鳥人連れてきたら、シーラに頑張ってもらうしかないか。
カーライルはそれなりにしっかりした身体つきしてるし、スティが肩に積んで逃げるのが一番だ。手を煩わせる、のは俺の心境としても、情報漏洩の点でも仕方のないことだと思う。
「安心しろ。コータ様直属の神官を、ないがしろにはせんよ」
「ありがとうございます」
スティは俺の心境を分かってくれてるのか、そう言って俺たちを安心させてくれた。




