345.こちらは数が少なくて
「メイヒャーディナルの峠に向かう、最高のアクセスポイントだからな。一般人、観光客が多い街を狙われるとこう、気分が悪い」
「確かに、おっしゃるとおりですね」
俺の意見に、シーラが頷いてくれる。ただの観光客とか巻き込んで大ごとになったら、洒落にならないもんなあ。
「ランブロードにはどうしますか」
「サングリアスがまだバレてないなら、何とかして探らせろ。万が一街一つ人質に取られる、なんてことになったら洒落にならねえ」
「承知しました」
一度行ったことのある、下僕がいるような街や村でも情報少ないってのに、ランブロードは行ったことがないもんなあ。
サングリアスに吹き込んでおいてよかった、とはちょっとだけ思った。彼女くらいしかマール教の、割と奥まで探れそうなやついないからな。
情報はそっちでなんとかするとして、クルンゴサに出る戦力だな。……最低でも出張ってきた連中を叩き潰せるレベルじゃないとだめだから……よし。
「ルッタ、スティに今の話を通せ。こっちの勢力が心もとない以上、お前らの力が必要になるってな」
「お伝えしてまいります。アムレクとミンミカにも」
「頼む。あと、カーライル呼んでくれ。留守番させるにしろついてってもらうにしろ、話をしておきたい」
「分かりました」
指示を伝えると、シーラは一礼をして部屋を出ていった。
カーライルは俺の側近みたいなもので、正直戦うには向いてない。だけど、向こうが俺と同じように女を利用する手法をとってきた場合には欠かせないんだよな。
……やっぱり連れて行くかな、うん。
「クルンゴサ、ですか」
やってきたカーライルに話をすると、彼はほんの少し考えてから「分かりました」と答えた。
「戦力としては大変不足ですが、コータ様をお守りできればと思います」
「おう、頼んだぞ。サブラナ・マールも女落としまくってたわけだし、同じことやられちゃお前がいないと太刀打ちできないだろうし」
今はこっちも女落としまくってるわけなんだけど、ある意味あっちが本家だしな。ていうか、俺今獣人ロリっ子だし。俺にまで効果あるなんて事になったらほんと、どうしようもない。
それに、ガチバトルになったらうちは戦力不足で、正面切った戦いでは多分不利だ。そうなると、勝つ手は一つ。
「……もし、ガチで戦闘になったら、頭を一発で取るしかねえな」
「マール教の部隊ですから、司令官は間違いなく女性です。それならば、コータ様が下僕にすれば済みますね」
「そうなんだけどさ」
ここがある意味神様チートってやつか。女の子なら、喜んで吸って吹き込んで下僕にしてはい終了、だからな。
とはいえ、その手段を取るのはちょっと面倒なんだよな。少数部隊を相手にするならともかく、もうちょっと大きな部隊が相手になる可能性だってあるから。
「司令官が前に出てくるってのはまずないし、もし出てくるならその相手は一流の戦士だってことになる」
「ええ」
そのくらいのことは、カーライルだって予測できてるよなあ。ルッタがその一例、みたいなもんだし。
カーライルは苦笑してから、言葉を続けた。
「ルシーラット殿やアルタイラ様、バングデスタ様が戦えば大丈夫でしょう。……私が戦闘能力を持たないことが、少々悔しいですな」
「お前神官だもんなあ。マール教の僧侶もそうだけど、普通は戦わなくていい身分だろ」
「まあ、兵士ではありませんし……従軍することはあったようですが」
「そういうもんか」
やっぱり、飯前とか休みになるはずの日に祈ったりするんだろうか。あと、死んだ者の弔いに。




