344.あいつら何をやってんだ
教育部隊が探りに来る、だけならまだ良かったのだけれど。
それから六日の後に、事態はこっそり悪化しつつあった。
「……武装化? ランブロードが?」
「はい。表向きは街の補修となっているようですが」
シーラが持ってきてくれた、ジランドから届いた手紙には、そんなことが書いてあった。念のため街に入り、一応情報を集めてくれたようだ。
「街の周りの塀を丈夫な壁にリフォームしているようです。それに様々な物資が運び込まれており、教育部隊以外の僧侶や信者が続々と入ってきているとか」
「それって……」
街の周りを頑丈に囲む。
様々な物資を運び込む。
あとマール教の人間が送り込まれて来てる……んだよ、な。
……ジランドが武装化って言ってる以上、つまりはそういうことだ。
「こっちに喧嘩売る準備じゃねえか。住民弾圧はその下準備か!」
「そのようです」
あーくそ、シーラが眉間揉むのも分かるぞ。どうせ俺の居場所はバレてる……いや、居場所というかマーダ教の本拠地と言うか、なんだけど。
向こうには俺、アルニムア・マーダが復活してるのが分かってるかどうか……も、ジランドの手紙にあった。
「邪神の復活を近いらしい、と信者たちは噂していたようですね」
「もう復活してるっての。邪神扱いは腹が立つけど」
そういうことである。つまり、教主はともかく大概のマール教信者は俺が復活してるとは思ってない。つまり、下僕たちのこともバレてなさそうだ。少なくとも、誰が彼女たちを下僕にしたのかは。
さて、そうなるとこっちの状況を整理しよう。
「こちらの物資は」
「食料は何とか十日分を。水は通常の生活を維持するのであれば一か月ほど保ちます」
「そこから切り詰めりゃ多少は伸びる、か」
食い物が十日分ってのは厳しいなあ。水だけでも人間生きてけるっていうけどさ、それは単純に生きるのが目的な場合だ。
戦争になって籠城した場合に水だけって無理無理無理。戦って体力使うんだからな。
「それと……ランブロードを前線基地にするつもりなら、まずはクルンゴサを狙ってくるな」
「そうですね……通過点、でしょうか」
「基地はいくつあってもいいだろ」
ランブロードからクルンゴサに人や物資を送り、そこからこちらに向かって進軍ってのがあり得る展開かな。こっちもそうだが、向こうも食い物とか重要だし。
……クルンゴサ、観光の街だからあんまりもの作ってないんだよな。現地調達ってのはまず、無理だ。
「……先にこちらがクルンゴサに出よう。潰しに来られても困る」
そんな街を占領されたら、大変だしな。こっちが打って出る……じゃなくて様子見に行くのが一番、かな。




