343.こいつら何を言ってんだ
「サングリアスから、手紙が届きました」
「おう、ありがとう」
見積もり書が届いた翌日に、シーラがその手紙を持ってきてくれた。
彼女、相変わらず俺の下僕なんだなあ……まあ、初期に吹き込んだネッサがそのまんまだからそれでいいのか。
で、サングリアスとなるとマール教側の話だよな。さて何だろう、と中身を取り出して読んでみる。
「ランブロードで暴動が起きたって……えーと」
「サヴィッスとクルンゴサの間にある街ですよ。こちらに来るときは飛ばしましたが」
「あ、そういえばそんなこと言ってたっけな」
揉め事だか何だか、一つ飛ばしてクルンゴサに入ったんだっけ。あーもーいろいろあってはっきり覚えてねえや。
けど、こっちから見てクルンゴサの向こう側ってことは、だいぶ近いよな。というか、一体何があったんだか、と思って先を読み進める。
「ええと、どうして暴動など起きたのでしょうか?」
「マール教の教育部隊……サングリアスとは別の部隊が、少々強硬に捜査を行ったらしいな」
「マーダ教信者がいたのでしょうか」
「いや。マール教の穏健派を、邪教との対立を望まない愚か者とか抜かしたらしい。訳わからん」
「は?」
うん、そうなるよな、シーラ。俺も読んでて訳わからんから、素直にそう言ったんだ。
要するに、過激派が穏健派をバカにしたとかそういうことならまだ分からんでもないんだが、何で外から入った教育部隊がそんなことをしなくちゃならんのだ。どう考えても火種持ち込んだだけじゃねえか。
「何ですか、その教育部隊は」
「過激派っぽいよな……今までそういう部隊がいるような話、聞いたことあるか?」
「いえ、全く。教育部隊ですから信仰の深い者が配属されるでしょうが、そういった過激な思考の者は別部隊になると思います」
「だよなあ」
俺が聞いてみると、シーラは軽く首を振ってものすごくうんざりした顔になった。
……そういやもとはファルンの護衛としてあの地下にやってきてたんだから、シーラもそれなりにマール教信仰が深い方だったのかな。マーダ教ではなかったし……でなきゃ俺とカーライル潰しにかかってこなかっただろうし。
つか、俺の配下のことほんとに何しやがったんだサブラナ・マールめ。おのれ、覚えてやがれ。
まあ、サブラナ・マールをしばくのは確定事項として放っておくぞ。まずは過激派教育部隊だ。
「んな考えのやつ入れたら、教育じゃなくて排除になるぞ」
「はい。そもそもはマーダ教信者やマール教を信じきれていない者を教育するための部隊のはず、穏健派を罵るのはさすがにおかしいですね」
「だよなあ」
いやほんと、マール教穏健派なら別に教育しなくてもいい、おとなしくていい信者じゃねえか。何で愚か者とか抜かすかよく分からん。
で、そのよく分からん部隊がだ。
「ただ、どうやらその部隊がこちらまで担当になるようだから用心しろってさ」
「まことですか……困りましたね」
いやもうほんと、困り果ててしまうな。マール教の穏健派ですら敵視してる部隊、ここらへんに来たら教育するんじゃなくて暴れるぞ、多分。




