342.見積もりはどうなっている
「サンディタウンから、鍛冶施設についての見積もりが届きました」
「はやっ!」
書類持ってきたカーライルに、俺は一言でツッコミを入れた。いや、お願いの手紙出して四日だよな? 片道二日弱って、燕使ってもめっちゃ早くないか。
「部屋の場所、室内の寸法や換気口の場所などを詳しく記した資料を、燕で送りましたから」
「ああ、それで見積もってくれたんだ。でも早くね?」
「基本的な見積もりは、だいたいできてるものなんですよ。これまでどれだけ鍛冶屋が作られたか、お分かりになりますか」
「あー、そういうこと」
過去のデータを元に、だいたいこの広さでこの設備ならこの値段ってのがあるわけだ。カタログみたいな……そりゃそうだよな、歴史のある世界なんだもんな。
といっても、ホント見積もり早い……まあ、あくまでも見積もりだから若干の上下はあるだろうけどさ。あとは交渉次第とか、こっちで素材を用意できれば少しは値引きとかかな。
「あ。一応寒冷地ということで、その分少しお高めになるそうです」
「鍛冶屋さんて、熱重要だもんな」
一応、それなりの寒さ対策はされてる城だけどな。地下の部屋だから、下からもじわじわ寒さがきたりするんだろう。
……書類を見てみると、ほぼ室内フルリフォームってところか。俺は詳しいことはわからないけれど、項目を見てみると床もやり直したりするらしい。……大変だな。
古い建物の再利用だから、どうしてもあちこちにボロが出てるのはしょうがないしな。あー、どっかに新しいお城か何か欲しい。
いっそ、神都サブラナあたり占拠したらそれなりに良い建物、ありそうな気がするけどな。
「あとは、周辺の情報ですね。まとめて送ってもらいました」
カーライルが指し示す、リフォーム見積書の下の紙数枚。そこに、今のサンディタウン周辺の状況が記されていた。もっとも、先にカーライルが読んでるよな。
「サンディタウンはそれほどでもないようですが、近くの村や街はマール教の締め付けがきつくなってきているようです。獣人や鳥人が出ていっているとか」
「……そうなると、グレコロンのところで囲ってる子たちは大丈夫か」
「そのようですよ。ですが、マール教からやんわりと教会に預けろという話が来ているそうで」
「使い倒す気まんまんじゃねえか」
教会で手伝いをしていた、アムレクのことを思い出す。要は、そういった下っ端の作業に獣人鳥人を使い倒すから差し出せ、ってとこだろうよ。あー、理解できるとかなりムカつくなあ。
「当然、はねのけたんだよな」
「当然ですね。自分のところで必要があって雇っているのだから、と理由をつけて断ったとのことです」
「吹き込んでも領主だなあ」
「なんですか、それ」
うん。俺の下僕になっちゃっても、ちゃんと領主としてしっかりと頑張ってるんだなって思っただけ。




