341.城の中身はどうなっている
で、さっそくカーライルに確認してもらった。ガイザス工房が移転してきても問題ないような部屋があるか、設備はどうか。
「カーライル、どうかな」
「古い設備のある部屋でしたら、地下にございました。ただ、設備自体は以前の戦の頃に使われたものですので、総入れ替えが必要でしょうな」
「俺がいなくなってから放置プレイだろうしな、そりゃそうだ」
おお、ちゃんと専用部屋あったんだ。設備が要するにめちゃくちゃ古いやつ、というのはもう仕方がないよなあ。前回の戦ってほんと、どのくらい前にやったんだか。
……気が遠くなるくらい前とか、そんな感じなのかな。そうするとマーダ教、よく残ってたなと思う。カーライルみたいな、神官の一族とか。
まあ、分からないことは置いておいて。
「設備は仕入れられそう?」
「一応、手配をしておきます。サンディタウンから注文できるかもしれません」
「グレコロンか」
ああ、やつなら鍛冶の設備新しく仕入れるって言ってもおかしくないのか。金あるし屋敷もあるし。持って来る先がこっちの城だけど、別荘とか何とかそのへんは言い逃れしてくれるだろ。丸投げってすげえな、俺。
「やっぱ、金持ってる権力者が味方にいると違うなあ」
「否定はしませんね」
ついつい本音を口にすると、カーライルが苦笑して同意してくれた。だよな、金と権力って結構重要だよな。
さて、設備はいいとして。原材料、というか鉱石の方だけど……俺が知ってるのは、東方砦周りくらいだな。カーライルもそうっぽい。
「鉱石に関しては、東方砦の周辺が鉱山でしたね。そこから輸送できればいいのですが、ここからですとちょっと遠いですね」
「遠いかー……近くで探すか」
「この辺りはあまり質が良くないらしいですね。麓の村で話を聞いてきたんですが」
「なるほど」
ああ、ちゃんとそっちも調べてきてくれたんだ。二度手間にならなくて助かったよ、カーライル。
そりゃまあ、地質も違うもんな。出てくる鉱石の質だって、当然違うよなあ。けど、東方砦はやっぱり遠いし、そっちで鉱石を取るならガイザス工房も砦の中に作ったほうが楽に決まってる。
「別のエリアで探せないか、調査しておきます」
「頼んだ」
というわけで、この近所で鉱石が探せるかどうかにかかってきそうだな。
その後、もうちょっと別の報告がもらえた。カーライル、ちゃんと休み取ってるかお前?
「ジランド一行の搬入で、食料は何とか七日分まで引き上げました。水に関しては井戸の修繕と水質の確認、あとは裏山の雪を使うことで一か月はどうにかいけそうです」
「水は何とかなりそうなのが、寒いところの特権というか……あ、でも雪は溶かして使わないと駄目だよな」
「ろ過も必要かと。砂や炭を使った処理施設ならございますから、それは大丈夫です」
「おう」
前の世界にいたときに、テレビで見たことあるぞ。樽の中に石とか砂とか炭とか入れて、上から水を流すと下にきれいになって出てくるやつ。こっちだと、それが精一杯って十分だよな。
「下水処理施設に関しては、チュリシスに調査してもらったところ意外に問題がないそうです。ほぼそのまま使えるとか」
「あー、あのネズミちゃん」
「本当の意味で汚れ仕事を厭わずにやってくれているので、こちらとしても助かります」
「下水って時点で臭いもんなあ……何か褒美を検討しとくか」
「質の良い石鹸など喜ばれるかと」
「めっちゃ実用的!」
上水道はろ過できて、下水処理は……あれかな、微生物に分解してもらうのと堆肥。そういう処理なら、こっちの技術レベルでも当然できるはずだ。というか、そういうのがないと街中とか絶対臭いし。
でもほんと、チュリシスってそんなところの調査とかしてくれてるのか。身体汚れるだろうし、良い石鹸とかお風呂とかあれば絶対喜んでくれるだろうな。労働者に風呂は正義。




