330.これでいいのか説教は
「俺ぁ、あんたの言ったことだから信用したんだぞ!」
「僧侶様が嘘つくわけないってな! どうしてくれんだよ!」
「こんなことなら、嫁の言う通りやめときゃよかったよ!」
村人たち、というか襲撃犯連中のいるほうがひどく騒がしくなってきた。多分、ガレラが事情を説明した結果だろう。
「ダルシア、行くぞ」
「あ、はい」
一人放っておくのも何なので、ダルシアを連れて俺もそっと覗きに行ってみる。陰からこそっとな。
「大体、ガレラさんがそんなことを言わなければっ」
「黙れ」
ここまで黙って聞いていたらしいスティが、さすがに切れたらしい。一緒にいるファルンが、呆れ顔で肩をすくめているのが分かる。
「あなた方。ガレラさんに全ての責任を押し付ける気ですの?」
前言即撤回、ファルンも静かにブチ切れていた。普段と違う低いこえで、わいわい言っていた加害者軍団を一気に黙らせる。
そこに、スティがどんと仁王立ちになった。「座れ」という唸り声混じりの命令に、ガレラ始め襲撃者一同、一斉に正座したよ。
「最初から冷静に考えて、それでついてきたのであればそれはお前さんの責任じゃないのか?」
「皆さん大人ですもの、そのくらいのことはきちんとお考えですわよ。ねえ?」
「そうでなければお前らは、僧侶の言う事なら何でもかんでも飲み込んで、何も考えずについてくる阿呆ということになるな」
「マール教の教えに、そのようなことはないはずなんですけれど」
うわあ。
スティとファルン、コンボで淡々とお説教しまくってる。座ってる連中、どんどん縮こまっていってるよ。
まあ、二人ともが当然のことを言っているだけなんだけどね。
「無論、扇動した僧侶が悪いことは誰が見ても分かる。だがな、その尻馬に乗ってきたお前たちも、バッティロスの民からしてみれば結局は加害者だ。その程度のこと、分からぬ頭ではあるまいに」
「大体、バッティロスの方々は主に草食だというではありませんか。自分たちで食べるものも畑で作っているし、その余剰分などを町で売買や物々交換などして別の物資を仕入れている。マール教の僧侶として、彼らが大変善良な民であることは保証いたしますわ」
「それを何だ、たかが僧侶が一人煽っただけでその畑を襲うなど。この」
めっちゃ怖い。淡々とした口調が変わらないのが、めっちゃ怖い。というか、そろそろスティはどかーんと行くぞ。耳を塞ごう。
俺を見て、よく分からないがダルシアも耳を塞いだ。よしよし、と思った瞬間。
「愚か者どもがぁああっ!!」
がおお、という雄叫びに聞こえたのは、多分俺だけではないと思いたい。ほら、襲撃犯どもビビって額を地面に擦り付けてるし。
「……くらくらしますう」
「……手で耳塞いだだけじゃ、お前には厳しかったか」
すまん。コウモリ獣人、耳良いんだな。俺はまあ何とかなったんだが、ダルシアはしっかり目を回してしまっていた。
表はあいつらに任せて、しばらくダルシアの看病してよう。膝枕くらいなら、何とかできるし。




