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329.これでいいのか罰則は

「さて」


 僧侶ガレラに、俺はまっすぐ向き直った。ここに来た本題を、しっかり解決しなくちゃいけないからだ。


「ガレラ。お前は、マール教の命令で作物泥棒やってるのか?」

「いいえ。断じてそのようなことは、上は命じておりません」

「つまり、お前の独断か」

「仰せのままにございます」


 ……あー。

 対立してる宗派だけどさ、さすがに上層部が作物泥棒だの強奪だの命じるようなアホンダラじゃなくてよかったよ。いやだって、そんな連中に俺たちが負けて、世界支配されてるなんてやっぱり嫌だし。

 じゃあ、ガレラはなぜそんなことをやってたんだ?


「なぜ、そのようなことをした」

「コウモリ獣人はかつて、アルニムア・マーダの手先として我がマール教の兵を蹂躙したと聞いております。神都サブラナよりマーダ教に注意せよ、という通達が参った今、再びそのようなことが起きないように私は彼らの力を削ぐつもりでいたのでございます」

「それが、バッティロスの民の反感を買うことになるって分かるだろうに。愚か者が」

「は、はい」


 あ、忖度による下っ端の暴走ってやつね。なるほどなるほど。

 それでこっち側の感情を計算に入れてないってのはほんと、愚かだよなあ。反感買うに決まってるじゃねえか。

 さて、そうなるとお仕置きとしては、だ。


「よし、ではまず村人たちの前でそれを公表しろ。その後は生きていれば、教会に……もっと上にそのことを報告し、衛兵のところに出頭して裁きを受けろ」

「全て、仰せのままにいたします! バッティロスの民への被害も、なんとしても賠償いたします!」

「そうだな。あと、便乗して暴れてる連中も裁かれるように計らえよ。あの人数だと、お前たちを咎めたりしたそうでなくても参加しなかった方が多いようだしな。そいつらにまで罪が広がるのは避けたい」

「は、はいいっ」


 うん。全部自分の暴走だってぶっちゃけさせて、そこらへんで決着つけさせるのが良いだろうな。あまり大ごとにしても、あっちにもこっちにも良いことはないし。


「よし、行け」

「はい!」


 俺が一言命じると、ガレラは慌てて立ち上がってすっ飛んでいった。この後どうなることやら……いやだって、全員から袋叩きに合う可能性だってあるし。

 それはそれとして……俺は、ふとそばにいるダルシアを振り返った。勝手に俺の方で処罰とか決めてしまったけれど、実際に被害にあったのはダルシアたちバッティロス村の人々だ。


「……ダルシア、これでよかったのかな」

「必要以上の罰をコータ様がお望みでないのであれば、私はかまいません」

「いや、襲撃された被害者としてさ。俺は神様だけど、自分の信者をちょっぴりひいきできるような性格じゃないらしい」


 落ち着くところに落ち着かせた感じになってしまった、ガレラに対しての罰。それがちゃんと村の人たちに受け入れてもらえるか、それが俺にはわからないから。


「正直言うと、ちょっと物足りないです。でも、これからもっと罰が与えられるのなら、それでいいと村長や皆も言うんじゃないかな、と私は思うんです」


 だから、ダルシアがそう言ってくれたことで俺はちょっとだけ、胸をなでおろした。

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