328.僧侶を吸ってみた夜
「それよりも、まさかマール教が作物泥棒を推進しているのか? そちらのほうを、先に答えてもらいたいんだが」
「く……」
呆れ顔でそう尋ねてくるスティに、おばちゃん僧侶は一瞬ひるんだ。おばちゃん、とは言ってもまあ俺にしてみれば許容範囲内、かな。うん。
それはさておき。
「こ、こやつは邪神の信者です! 構いませぬ、サブラナ・マール様の名の元にやっておしまいなさい!」
「無茶言うな、下衆が」
「ごっ」
うん、とかさすがにそれはちょっと、とかひそひそ話をし合う人たちの前で、僧侶はスティに軽く殴られて失神した。ものすごく手加減してくれたんだな、ありがとうよ。
「しばらく黙っていろ。コータちゃん、危ないからこの僧侶さんと一緒にさがっていなさい」
「はーい。ダルシアお姉ちゃん、行こう」
「え、あ、はい」
第三者の前につき、全力でロリっ子モードである。目を丸くしたダルシアにおばちゃん僧侶を抱えてもらい、そのまますぐそばの農機具小屋の裏まで回った。
スティが襲撃者側の尋問を始めたようで、おっさんたちがビビり倒してる声が聞こえてくる。よし、今のうちにやっちまえ。
「ダルシア、その僧侶後ろからしっかり捕まえてろ」
「あ、は、はいっ」
俺の指示に、ダルシアは慌てて僧侶の背中側に回って彼女を支えてくれる。まだ意識が飛んでる状態だけど、吸って吹き込むんだから抵抗がないほうがいいよな。
「では、いただきます」
「ん、むっ?」
「わお」
わおってなんだダルシア、とか思いつつ僧侶の唇に噛み付くようにキスをする。で、軽く吸い込んだ彼女の気は……あーなんだ、山の中なのにカツオ出汁って感じだな、こりゃ。
「ん、ふ、ふうん」
一応意識は戻ったようだけど、寝惚けている間に俺の気をふーっと吹き込む。もがもがしている僧侶、ダルシアに押さえてもらっててよかったなと思った。俺、この身体じゃおばちゃんの抵抗受け止められないわ、多分。
ほどほどに吹き込んだところで、顔を離す。ついついいつものセリフが出てしまうのは、もう癖なのでしょうがないか。
「ごちそうさまでした。ダルシア、もう良いぞ」
「おそまつさまで、ございました」
「あ、はい」
おばちゃんの方もぺこり、と頭を下げてくれた。ダルシアが手を離しても、そこにぺたりと座り込んだままで動こうとしない。
「お前、名前は何という」
「ガレラ、です」
「よし」
名前を尋ねると、素直に答えてくれた。まあ、これで失敗したことないんだけどな……実際失敗とかするんだろうか、とは思う。吹き込む量が少なかったり、相手に耐性があったりする可能性もあるわけで。
今回は成功してるから、良いことにしよう。
「ガレラ、お前は今から俺、コータの下僕だ。それを周囲のマール教や一般人たちに知られてはならない。いいな」
「承知いたしました、コータ様。ガレラは、コータ様に忠誠を誓います……」
「……ほんとに下僕になってる。コータ様、すごいです」
名前を聞いて、手っ取り早く命じて。それを目の前で繰り広げられてダルシアは、改めて俺が邪神だということを何とか理解したらしいな。やっぱり、外見ってでかいよなあ。
「ま、実演でもしなきゃ普通は信用出来ないだろ。仕方ないさ」
「いえ。とっても失礼いたしました」
理解してくれて、それで頭下げてくれたダルシアはほんと、可愛いなあ。よし一段落したら吸ってやるから待っていろ、うん。




