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324.洞の入口迎えの彼ら

 村に入って少し歩くと、崖に突き当たった。眼の前にそそり立つ崖の一部に、さほど大きくない洞窟がポッカリと口を開けている。

 ……大きくないとは言っても、スティが普通に歩いて入れるくらいのサイズだけどな。


「村長!」


 ダルシアが洞窟の入口から、奥に向かって声を掛ける。ややあって、奥から数人がゆっくり出てきた。

 細身のおっさんと小太りのおばちゃんと、中央にいる白髪の小さなおじいちゃん。おじいちゃんが村長かな。


「よう戻ったな、ダルシア」

「はい。えっと、バングデスタ様に、おいでいただきました!」


 うん、やっぱり村長だ。

 バングデスタ、名を呼ばれたスティはゆっくりと歩み出してきた。俺は付き添いのフリをしてるけど、何というかおっさんおばちゃんがこっちを気にしてるようだ。単に、何で僧侶とちびっこがついてきてるのかって感じだけど。


「おお、おお。蘇られたはまことでありましたか!」

「お前さんがこの村の長か」

「はい。ベルーテと申します」

「うむ。俺はバングデスタ、獣の王だ」


 村長、ベルーテが名乗ると、スティも本来の名前を口にした。そうして目を細め、一つ大きく頷く。ぱたん、と長い尻尾が一度だけ、自分のすねを打った。


「ベルーテ。今までよく、お前の民を率いてきた。このバングデスタ、お前のような者を配下に持つことができて嬉しく思うぞ」

「なんというありがたいお言葉を……!」


 あ。ベルーテ、めちゃくちゃ目をきらきらうるうるさせてる。スティに褒めてもらえて、よっぽど嬉しいんだなあ。

 付き添いらしいおっさんとおばちゃんも、「村長……!」「バッティロスの村が、ここまでお褒めいただけるとは……!」と感動の嵐である。すごいなスティ、何で俺の配下なんだろうな、お前。

 ま、それはそれとして、話を進めてもらおう。


「大意はこのダルシアから聞いている。ただ、彼女が村を離れてからまた襲撃があったようだな」

「はい……我らはマール教の本意なのかと伺ったのですが、かの僧侶殿は自分こそがマール教の総意を代表する者だと言ってはばからず」

「それはありませんわね」


 ああ、そりゃファルン、そこで出てくるよなあ。俺の下僕であるかどうかは関係なく、略奪がマール教の本意だなんてないわー、という考えだろうし。


「あなたは」

「マール教の僧侶で、ファルンと申します。この度は、バングデスタ様御一行の後見として同行しております」


 ベルーテの問いに、一応間違ってはいない名乗りを上げるファルン。思わず言葉を止めてしまったベルーテ一行の前で、彼女はぐっと拳を握って意見を続けた。


「わたくしは修行中の身ではありますが、たとえマーダ教を奉ずる集落とはいえその財を奪うなど、決して許されることではありません」

「た、たしかに……」

「しかし、村長。こやつもまたマール教ですぞ」

「そうです。僧侶の言葉、信じて良いものか」


 ここまで黙っていたおっさんとおばちゃんが、さすがにベルーテをたしなめる。うん、ファルンは自分の村の畑荒らしたやつと同じマール教の僧侶だもんな。事情を知らなければ、疑うのは当然のことだ。

 だから、本当のことを言おうと思ったら同じことを、スティが言ってくれた。


「ああ、この者は我らが神の下僕として仕えている。案ずることはないぞ」

「我らが……神」

「憎きサブラナ・マールとの先の戦でほとんどの力を奪われたせいで、幼子の姿になっておられるがな。無事、この世界に蘇られた」


 ベルーテ、おっさん、おばちゃんが目を丸くする前で、俺はそっと進み出た。さて、ロリっ子スタイルで邪神の威厳は出ているんだろうか。

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