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323.村の入口畑はひどく

 さてさて。

 大人気なくべそをかくカーライルを説得し、ファルンに同行の命令を出し、ついでに修行の旅だっていう書状を下の街の教会で作ってもらって。

 北方城と同じ大陸、その西側にあるダルシアの村へはいっぺん海に出て、船で四日ほどの旅路だった。……荒れてなくても酔うものは酔う。あー気持ち悪かった。

 まあ、山越えしなくちゃならない馬車や徒歩より早いのは助かったけどな。うっかりすると十日くらいかかるとか、かからないとか。


 そうして、港についてからは歩いたりスティに乗ったりして、三日。


「ここより先が、私たちのバッティロス村になります」


 山の中。それなりに整備された道の両脇に、簡素な柵が作られている。この柵の向こうが、ダルシアの村ということだった。

 もちろん、住居は洞窟の中だ。このへん、柵の向こうはいろんな作物が実るはずの、畑になっている。


「この辺りの畑は、私たちが食べるものを作ってるんです……けど」

「畑、荒れてますわね……」


 しょげてしまったダルシアと、頬に手を当てて少しお怒り気味のファルン。スティは軽く手を伸ばし、青い実がついている……トマトかな、その茎を軽く触れた。


「むしられた痕があるな。収穫ではないだろう」

「茎ごとブチッといってますからねえ」


 外ではどこで誰が聞いてるか分からないので、俺に対しても敬語は不要と言ってある。やっぱりロリっ子相手に敬語は、どう考えてもおかしいもんな。

 ま、それはそれとしてスティの指先、トマトの茎はちぎれて先がなくなっている。獣が食ったようではないから……人だな。例の泥棒どもがやらかしたらしい。しかも、どう見てもここ二、三日くらいだよね、この新鮮さ。

 で、ぐるっと見回すと色づき始めた実がついてる枝や、あと地面に潰れた実が落ちてたりする。地面にはむちゃくちゃに歩き回ってる足跡もあって、どう見ても荒らされた直後ですありがとうございます……じゃないな、うん。


「また来たんだあ……」

「しかもこのやり方、最悪ですわね」

「だなあ。せめてちゃんと収穫していきゃ良いものを、茎をぶちっとなんて」


 うう、ダルシアが全力でしょげまくってる。ファルンもスティも、地味に怒ってるのがすごく分かるよ。

 いや、俺だって怒ってるんだけどさ……やり方が酷いよな、これ。


「それを率いているのがマール教の僧侶なんて……同じ立場として、その僧侶はわたくし許せませんわ」


 あ、ファルンが杖握りしめて断言。俺の下僕やってるのどうのとは関係なく、これはファルン自身の思考なんだろうな。

 ……いいヤツを下僕にできたな、とまるで悪党のような考えになった。ま、邪神扱いされてる以上悪党だけど。


「あ、あの、皆の住んでるところまで案内します」

「うむ、そうだな。頼むぞ、ダルシア」

「よろしくお願いしますね、ダルシアさん」

「はい」


 ひとまず、ここで畑の惨状を眺めていても始まらない。責任者に話を聞くために俺たちは、先に進むことにしよう。


「コータちゃん、行きますよ」

「はーい」


 うん、念のため俺もロリっ子モードでな。

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