319.お目覚め途端に驚いた
「コータちゃまー」
飯を食い終わって、さてコウモリ少女の様子でも見に行こうかと立ち上がりかけたところにミンミカがやってきた。
「ファルンさんからでんごんでーす。こうもりさん、めがさめたって」
「あ、ほんとか」
おう、伝言ありがとよ。ついでに軽くもふもふしておこう、これは邪神特権……でいいんだよな?
「ふむ。話を伺いたいですな」
「私も、名前を出されましたので同行したく」
あの彼女に名前を呼ばれた二人は、自分たちから一緒に来てくれると申し出てくれた。もちろん、俺から誘うつもりだったけどな。
「いいよ。二人の名前知ってるなら、姿形で分かるかもしれないし」
「コータちゃまは、ちっちゃいですもんねー」
「アルニムア・マーダはもっと大きいもんなあ」
平然と頭を撫でるのはまあ、俺も嬉しいからいいんだけど。まるで尊敬とかされてない神様だなあ、とは自分でも思う。
スティ、ルッタ、苦笑しながらこっち見るんじゃねえよ。もっとも、偉そうに不敬だぞなんて言う気はないけどな。
「じゃ、行こうか。ミンミカ、ありがとな」
「はいですー。きょうはいっしょ、ねるですよ!」
「はいはい」
あ、何かコウモリ娘が突入してきたところにいられなかったのが面白くないらしいぞ、ミンミカ。ちょっと頬膨らませてるの、分かったし。
「中でお待ちですよ」と言ってくれたファルンと入れ替わりに、客室に入る。ベッドの上でコウモリ娘は、まだちょっとぼんやりしてる感じだった。
「お、起きたか」
「ふあい」
もともと垂れ目っぽいので、案外ちゃんと起きてるのかもしれないと思ったんだけど……やっぱ寝ぼけてるかな。まあいいや。髪の毛はファルンが梳いたのか、きちんと整ってる。
と、俺の後ろから入ってきたスティとルッタがそれぞれに声をかけた。
「特に怪我もないそうだ。飛び続けて疲れたか、コウモリの娘よ」
「西から来たのか? ここまで大変だったろうに」
「あ、はい、ありがとーございます……」
虎姉ちゃんと大柄な翼女。この二人見て特に驚かないって、度胸があるのか寝ぼけてるのか見慣れてるのか、さてさて。
と、すぐに彼女は目を軽くしばたたかせながら「あれ、え?」と二人を見比べ始めてる。そうして、恐る恐る口を開いた。
「あ、あの、失礼ながら、バングデスタ様と、アルタイラ様……で、いらっしゃいますか」
「よくわかったな。そうだ、俺がバングデスタ、お前たちの王だ」
「私がアルタイラ、鳥の王だ。……そうか、お前の種族は我々の姿をよく伝えていたのだな」
ずばり二人の名前を言い当てたので、その答えとしてそれぞれが名乗る。それが自分への肯定だと気づいたコウモリのお嬢ちゃんは……慌ててベッドから転げ落ちた。つま先と翼の先にシーツ引っ掛けながらも、見事にローリング土下座を決める。
「は、はひっ! わわわわたしはコウモリ獣人のダルシアと申しますっ!」
「いや降りなくていいから」
ついツッコミ入れてしまったよ。そっか、ダルシアっていうのか、お前さん。
……スティとルッタでこれだけビビってるとなると……俺の正体知ったらどうなるんだろうなあ、彼女。
 




