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315.向こうはひどいやり方で

「西方にて、マーダ教狩りが始まっているようです。ええと、今からすると十日ほど前ですかね」


 ドンガタから帰って半月ほど。あ、この世界のカレンダーは前の世界とあんまり変わらないみたいだけど、まあそれはそれとして。

 フレイナをはじめとする燕の一族たちにあちこち飛び回ってもらって、動き始めたであろうマール教側の情報を集めている。今フレイナが持ってきてくれた情報は、ひどく早くから連中が嫌な方向に動いてくれてるってもんだよな。


「うえー。なんでそう、極端に走るかな……反感買うだけなのに」

「まあ、わかりやすく喧嘩売りに来てますね……」


 俺の自室で事務処理を手伝ってくれてるカーライルと、顔を見合わせてため息をつく。いやもう、西方の拠点に逃げ込んでる奴らとかいるだろうか。いたとしても、大丈夫かな。


「てか、さすがに燕の一族は情報早いね。ほんと、助かるよ」

「お褒めに預かり光栄ですー! これが燕の取り柄なんで」

「うん。情報の早さってのは、それだけで一つの武器になるからな。今後もよろしく頼むよ」

「もちろんです! お任せください」


 とりあえず、褒めるのとお礼言うのはちゃんとしてやれば喜ばれてもっと仕事頑張ってくれるはずなので、きちんとしておく。こき使われた社畜経験者としては、ちょっと褒めてもらえるだけでも違うってのは身にしみて分かっているからなあ。

 「それじゃ、行ってきまーす!」と元気に退室していったフレイナを見送ってから、俺は資料をパラパラとめくっているカーライルに視線を戻した。


「南の方はどうかな」

「あちらもきな臭くなっているようですね。北方(このへん)は、まだおとなしいもんです」

「あちこちで俺が僧侶に吹き込んでるから、かな」

「それと、教育部隊の動きが鈍いようです」

「……ああ、サングリアス」


 地味にいろいろ吹き込んでたのが、ここに来て功を奏しているか。西と南は全く手を付けてないから、そっちの方が動きが激しいわけね。


「彼女、何かやってんのか」

「意図的に、こちら側の監視を緩くしているようです。あと、こっそり検閲や家宅捜索の情報が漏れているかと」

「うわあ」


 カーライルが見せてくれた資料に目を通して、軽く頭を抱える。はっきりそう書いてあるわけではないけれど、住民の動きとか教育部隊の働き方を考えるとそう言われてもおかしくない。そんなレベルでマーダ教信者は、監視や捜索の手からすり抜けているっぽい。

 要するに、探しても探しても見つからない、そういう結論がその資料には書かれていたわけだ。


「……大丈夫かな、サングリアス」

「大丈夫ではないかと。アルタイラ様がこちらに来てしまいましたから」


 独り言っぽく呟いたのに、カーライルがあっさりと答えてくれる。嫌な答えだったけど、可能性としてはそうだよな。


「サングリアス殿もおそらく、アルタイラ様絡みのスパイといった感じで疑われてるとは思いますね」

「だよな。ちゃんと忘れてくれると良いんだが」

「コータ様の命令が、うまく発動できれば……ですね」


 一応彼女には、俺らのことがバレた時点で忘れろと命じてはある。けど、結構大雑把な命令だったよな。ちゃんと発動してくれるんだろうか?

 ともかく、今考えても仕方ないか。まずは目の前の問題を、どうにかしないと。


「とりあえず、ファルンを使って教会から引き出せるだけ金引き出しとこう。資金がないと、どうにもこうにも動けなくなるからな」

「分かっておりますよ」


 前の世界でも今の世界でも、必要なのは金だカネ。

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