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311.帰るつもりがその前に

 宿を使わせてもらったので、教会のジェイレンのところに挨拶に行く。裏から教会に入ると、彼女は事務作業をやっていた。


「皆様、お家にお戻りですか」


 俺たちに気づいて、俺たちの格好に気づいて彼女は、そんなふうに言ってきた。ま、荷物まとめて持ってるんだし分かるよな。


「ああ。用件は片付いたからな」

「そうですか、お疲れ様でしたあ」


 俺自身は大して疲れちゃいないんだが、配下一同……特に修行つけられてたカーライルがかなりお疲れだからな。


「また、武具などのご用件がありましたらおいでくださいませ。お部屋はいつでも空けておきますので」

「いつも空いてる、とも言うな」

「そうですね!」


 シーラのツッコミに元気に答えられる辺り、ジェイレンも変なやつだよな。……しかし、ほんとに空いてるよな、あの宿舎。


「マール教全盛のこの世界でそれも変だよな。ま、いいけど」

「ちゃんと、僧侶としての仕事はおこたらないでくれよ。ジェイレン殿」

「はい、もちろんです」


 カーライルがきっちり釘を差すのにも、ジェイレンは素直に頷く。うん、変にサボったりしたら怪しまれるからな。一応、俺のこととかバレたら忘れろとは指示してあるけど……どこまで効果があるものやら。


「僧侶さまー」


 ふいに、教会入口の扉が開いた。ひょこっと顔を出したのは鳥頭の人で、ぱっと見は鳩か何かに見える。声からして女性かな、と思ったけどまあどっちでもいいか。


「神都サブラナからお手紙です」

「あ、はーい」


 その推定彼女に呼ばれて、ジェイレンは「少々お待ちくださいねー」と俺たちに言い置いて出ていった。

 時期が時期なんで、神都サブラナからの手紙なんて嫌な予感しかない。それは配下たちも同じ思いだったようで。


「しばらく待ちましょうか。内容が知りたいですし」

「俺もそう思います」

「だよな。待とう」


 四天王二人が代表してそう言ってくれたので、堂々と待つことにする。特に俺とかマーダ教絡みなら、ジェイレンの方から俺に見せてくれるだろう。


「……コータ様」


 しばらくして戻ってきたジェイレンの顔で、ああやっぱり俺の予感間違ってなかったね、と思った。表で怪しまれなかったか、と思えるくらいに暗い顔なんだもんな。


「武装命令が出ました。アルニムア・マーダ復活とマーダ教の攻勢に対応せよ、と」

「え」

「また、各地において勇者志望の若者を徴兵せよ、と」


 って、おいおいおい。全方位から突っ込むしかないだろうその命令。


「つまり、マール教はマーダ教に戦争を仕掛けるのでその準備をしろ、ということですよね」

「若者を徴兵、だからな。年寄りより使命に燃えて使いでのある連中を、まとめて戦に引っ張り出すということだ」


 カーライルが低い声で、スティが喉の奥でうなりながら吐き捨てる。


「…………完全に喧嘩を売ってきているな」

「勇者志望、って……そこにたどり着かない者のほうが多いですよね」


 ルッタとシーラが、顔を見合わせて苦々しく吐き出す。

 そうなるとこちらも、先にやっておかなくちゃいけない事がある。


「ルッタ、スティ、シーラ、カーライル」


 配下たちの名を呼んで、視線を俺に集中させる。行き先を軽く変更して、全員でそこに行くためだ。


「帰る前に、ガイザスさんとこ寄ってく。ついてこい」

「はっ」


 戦になるなら、俺たちにも武器が必要になる。マーダ教寄りであると言っていたガイザスさんに、協力を依頼するんだ。

 あっちがその気なら、こっちも受けて立つぜ。

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