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310.帰る準備はできている

 一応、ガイザスさんから伝えられた日付は教えてあったので翌日には、シーラが迎えに来てくれた。

 そうしてカーライルを見て、こんなことを言った。


「アルタイラ様やバングデスタ様に鍛えられていると聞いていたが……確かに、ほんの少し引き締まったような気がするな」

「ほんの少し、ですか……」

「十日も経っていないのだ。それでいきなり引き締まっていたら、何かの病かと疑うだろうが」

「まあ、それはそうですが」


 俺は毎日見てるから変化に気づかなかったけど、シーラから見るとそれなりに訓練の結果は出ているようだ。

 いや、もともと太ってるわけでもなかったし、スマートな残念イケメンなんだけど。

 外見はともかく、残念な中身は四天王に鍛えてもらったところで治るもんじゃないしなあ。

 それはそれとして、だ。


「悪いな、シーラ。迎えに来てもらって」

「さすがに、アルタイラ様お一人で全員を運ぶわけには参りませんから」


 なんだよねえ。俺、スティ、カーライルをいっぺんに運ぼうと思ったら、ルッタ一人ではとてもじゃないけど無理。

 カーライルがいなきゃよかったんだよな、というのはこの際考えないことにする。残念イケメンでも男がいると、飯食いに行ったときとかに話しかけてくる野郎どもが激減してのんびり飯が食えるんだよね。

 ルッタとスティで撃退はすぐできるんだけど、そもそも寄ってこないほうがこっちは楽だし。


「まあ、バングデスタは私が運んだほうが安定するからな。ルシーラットはこのへろへろ神官と、コータ様を頼むぞ」

「コータ様は、我が名に賭けましてご安全を保証いたします」

「うん、ありがとう」


 ルッタがスティを運ぶのはまあ、筋力とか身体の大きさとか考えてもわかりきってることだ。なので、シーラの任務は俺とカーライルを北方城まで運ぶこと、である。


「シーラ殿、できれば私も保証してほしいのですが」

「一応気をつけよう」


 俺を安全に運ぶのはマーダ教信者としては当然のことなので、神官であるカーライルもちゃんと運んでやってほしいんだけど。

 シーラはしれっと一応、をつけて言った後に少し間を置いて「冗談だ」と言葉を続けた。


「カーライル殿はマーダ教の神官、コータ様にとっては蘇りの恩人だ。その者を軽んじるほど、自分は愚かではない」

「は、はい」


 蘇りの恩人。俺の意識からすると、いきなり目が覚めた直後に守ってもらっていろいろ教えてもらった恩人なんだけど、シーラや他の配下たちから見るとそういうことになる、らしい。

 邪神アルニムア・マーダを復活させたのだから、間違ってはいないけどな。


「大体、お前にはコータ様をしっかり保持してもらわないといかんのだが」

「やっぱりそっちですか」


 ただしシーラにとっては結局、俺の配下の一人でしかないのも事実だ。それと、帰りに俺を抱っこしてもらう役目だってのも。

 シーラはそのカーライルをぶら下げて、北方城まで飛んで帰らなくちゃいけないわけだからな。

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