309.やっとできたぞ龍の盾
カーライルが鍛えられているのを横目にのんびりしつつ、ジェイレン吸って吹き込んだりして五日が過ぎた。
期日なので、皆でガイザス工房にお邪魔している。
「ほれ、お嬢ちゃん用の盾じゃ」
「ありがとうございますー」
お盆サイズの逆鱗が、シンプルな金属の縁と持ち手、あと革のベルトの付いた綺麗な盾になった。
このベルト、太めで長さが調節できるようになってるな。二箇所で盾とくっついてるけど、斜めになるなあ。
で、持ち手には革が何重にも巻き付けてあって、握ってみると程よい太さがしっくり来る。
「あ、持ちやすい」
「お嬢ちゃんが大きくなったら、持ち手を直してやるからな。持っておいで」
「はい」
ガイザスさんの言葉にはありがたく頷いたものの、脳内ではさてどうだろうと軽く思考する。
大きくなったら……大きくなれるのかね、この身体。サブラナ・マールのおかげでしっかり魂砕かれた結果らしいし。
いっぺん死んだら大きくなって復活する、らしいけれど、死ぬのはいやだな。ちゃんと復活できるかどうかも分からない、ということもあるから。
「使わんときは背負えるように、革のベルトを付けといたぞ。しっかり守ってもらえよ」
「わかりました。しっかり守ってもらいます」
ベルトが斜めに付いてるのは、これ背負う用なのか。使わないときは両手空けられるから、いいな。
なんて俺がクァルードの逆鱗の盾をあちこち見ている間に、ガイザスさんはもう一枚の逆鱗をルッタに渡していた。そう、ヴィオンのやつ。
「こっちの逆鱗はこれが精一杯じゃったが、これで良かったかの」
「はい、ありがとうございます」
頭を下げてルッタが受け取った逆鱗は、俺のと同じように縁を金属でカバーしていた。あと、裏側にも薄い金属が……箔かな、貼られている。表面はどうやら、ガラスか何かでコーティングされているようだった。
ま、これでもクァルードのとは違って盾に使うには向いてないようだけど。もっとも、ルッタはもともとその気はないし。
「自分の部屋に飾っておきます。これは、戦には出してやりたくはないので」
「そうじゃな」
ぼろぼろの逆鱗を大切に布にくるむルッタと、その気持ちに頷くガイザスさん。うん、城のルッタの部屋に置いといてのんびり過ごせな、ヴィオン。
「ところで兄ちゃん、えらくへろへろじゃが大丈夫か?」
「あ、はい、どうにか」
あーうん、ガイザスさんから見てもすごくへろへろになってるよな、カーライル。
武器を見るってんでスティと共については来たんだけど、剣系並んでる棚の前でへたりこんでいる。
「俺たちでちょっと鍛えてまして」
「なかなか筋が良いので、ついつい」
そのスティ、そしてルッタは笑顔になってガイザスさんに答える。いやお前ら、ついついで俺の神官へろへろにするなよなあ。
ガイザスさんも同じようなことを考えていたのか、眉間に軽くシワを寄せて二人をたしなめてくれた。
「何事もやりすぎはいかんぞ? 実戦に出す前に壊してしまっては、意味がないからの」
「肝に銘じます」
「……今後は気をつけます」
「あと、兄ちゃんはゆっくり休めよ。回復しないと、上には伸びん」
「はい、そうします」
いやほんと、カーライルは今日はしっかり飯食わせて寝かせよう。
戦力も大事だけど、そもそも俺の神官ってこいつ以外にまだ見つかってないしな。




