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304.忘れてたのはその名前

 道ってのは案外覚えてるもんで、俺は二人を先導して無事教会までたどり着くことができた。無造作に「こんにちはー」と声をかけながら中に入ると、ややあってちっこい僧侶が走ってくる。


「コータ様! いらっしゃいませ!」

「おう、久しぶり」


 地人で俺と同じくらいの身長しかない合法ロリ、な彼女は軽く息を弾ませながら、嬉しそうに俺に笑ってくれた。いやそこ主張するのか、と俺は自分の中にツッコミを入れておこう。周囲が俺基準で身長高いのばかりだから、話す時大変なんだよ。

 うん、今の話題はそこじゃないな。


「用事でしばらく厄介になりたい。部屋空いてるか?」

「はい、もちろん大丈夫です」


 教会の中に入ってしまって誰もいないので、素で会話する。僧侶は即答してくれた後、台帳を引っ張り出してきた。一応あるのな。


「ええと……本日より数日、三名様でいいですか?」

「それで頼む。身体が大きい連れがいるが、大丈夫か?」

「獣人の方もドンガタにはよく来られますから、大丈夫ですよ。お部屋を準備してまいりますので、少々お待ちくださいね」


 手早く記入した後パタンと台帳を閉じて、彼女はばたばたと走り去っていった。……よっぽど暇だったのかね。


「暇だったんかねえ」

「今日は祈りに来る日でもありませんし、宿も開店休業となれば暇だろう」


 スティとルッタがのほほんと彼女を見送りながら、そんな会話をしている。ああ、祈りを捧げるために来る日があるのね。俺邪神だから、そういうのあんまり関係ないし。何しろ、自分が祈られる方だから。

 で、ふと気がついた。俺、彼女の名前知らない……前回聞いてないしなあ、と思ってたら割とすぐに、彼女は戻ってきてくれた。


「おまたせしました。お部屋にご案内いたします」

「うん、ありがとう。そういえば、名前は聞いてなかったね」

「あ、そうでしたっけ。ジェイレン、と言います」

「ジェイレンか。ありがとう、行こう」


 よしよし、聞き出せた。人間素直が大事だよなあ……いや、今の俺、神様だけど。

 宿舎まで歩きながら、ジェイレンはルッタとスティに気を使うように話しかけてくる。


「そちらのお二人様は初めてでいらっしゃいますね。施設とかは大丈夫でしょうか?」

「それは俺が説明するけど、大事なことは飯だけ外で食うくらいだろ」

「あ、そこだけご理解いただけると助かります」


 そこだけ、というより結構重要事項だよな。先に行っておかないと、腹減った時点でえ~外に行くのかよ、なんて不満が出るだろうし。

 で、俺たちの会話を聞いていたルッタがふむ、と門の方に視線を向けた。あの向こうにあるのは確か、ジェイレンの実家だったっけな、居酒屋さん。


「食事は外ですか。そういえば、お向かいに居酒屋がありましたね」

「そこ、彼女の実家なんだってさ」

「なるほど」


 そのことを告げると、スティが楽しそうに目を細めた。あ、こいつ飲む気か。いやいいんだけど、ジェイレンの実家が稼げるわけだしな。


「では、そちらで食事はいただきましょう」

「うまい酒があると、俺は嬉しいですが」

「ありがとうございます! 大丈夫です、地人族はお酒にもうるさいですから」


 こっちも飲む気なのがひと目で分かる顔のルッタ、そしてスティの言葉にジェイレンは、とっても嬉しそうに笑った。お前さんも美味しそうだし、後で吸ってやろ。

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