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292.扉の奥にひそむもの

 中に入り、念のため引き戸を閉める。向こう側からはスティがやったように開けないとだめで、こちら側からなら普通に開くそうだ。中にスパイでもいたら大変そうだな、とは思ったけど今のところ、そんなことはないっぽい。

 地下砦なので閉めたら真っ暗、かと思いきやそうでもなかった。通路の壁、上の方にぽつ、ぽつと明かりが灯っていて、普通に歩けるくらいには明るさが維持されている。ろうそくとかじゃなくて、石がぽわんと光っているんだよね。

 魔力のこもった石を光らせる、魔術灯。あれ、でもあの石、乾電池みたいな感じで魔力切れ起こすはずだけど。


「魔術灯、現役なんだ」

「中の石さえ交換すれば、半永久的に使用できますから。北方城のものも、コータ様が入城される前に総取り替えしましたので」

「なるほど」


 この辺はシーラが説明してくれた。……そっか、龍人族が隠れているんなら明かりも使えるようにしとくか。暗闇でも暮らせる、って種族じゃなさげだし。


「ただ、湿気はどうしようもないな」

「通路は最低限の施設しかございません。居住スペースはそれなりに空気交換もされておりますし、水もございます」


 そして、続けてスティが説明。来たことがあるから多分、そのときにクァルードやその配下から聞いたんだろうな。というか、空気と水は地下で暮らすのに必須だろ。いくら龍人でも、そこらの湿気吸って生きてるわけじゃない……と思う、うん。

 湿気吸って生きてるなら、ここまでジメジメはしてないなと気がついたのはその数歩後。その後も、歩きながらのスティやシーラとの会話は続く。


「表に出なくて済むくらいには、施設は整ってると。明かりに使う石も、在庫があるんだ?」

「在庫どころか、奥に鉱脈がございます。というよりは、古くより採掘していた場所を砦に改装したようでして」

「自分が当時噂で聞いた限りでは、採掘坑のいくつかを隠し出口として利用していたとか」

「それは本当だ。他の砦や城にもあるものが、このような立地の砦にないわけがないだろう」


 そりゃ、魔術灯には何の問題もないか。あと、別に出入り口ってそりゃあるよなあ。水だの毒ガスだの油のち火だの、ぶっこまれる可能性だってあるもんな。




「ここより先が居住区です」


 そう言ってスティが足を止めた先。やっぱり、通路の途中を扉が仕切っている。

 がんがんがん、と大変力強い彼女のノックをしっかり受け止めているから、丈夫に出来てるらしい。そりゃ、砦だしなあ。

 で、無造作に扉を開く。って、やっぱり引き戸かよ。そのドアノブはフェイクか。


「誰だ!」

「あ!」


 途端、がきんと金属同士のぶつかる音が目の前でした。うわあ、マジでスティが先頭で良かったよ、俺涙目になる。


「警戒するのは悪くないがな、アルタイラ」

「お前だったか。脅かすな、バングデスタ」


 ていうか、引き戸開けた途端ルッタが切りかかってきてそれをスティが受け止めた、ってことかよ。洒落になってねえな、もう。

 あと最大のライバル同士っぽいニヤリ笑いを見せるな、二人して。ええい距離を取れ、俺がいるんだぞ。


「ルッタ!」

「コータ様! こ、これは失礼をいたしました!」

「いや、いい。マール教を警戒してたんだろ?」

「は、はい……」


 俺が名前呼んだら、ルッタは即しぼんだ。いや、別に俺斬ろうとしたわけじゃないし、スティが受け止めたんだから大丈夫だって。


「アルタイラ様、ご無事でしたか」

「ルシーラットか……手間を掛けたな」


 配下であるシーラが声かけてもへこんだまま。ルッタ、ここまでいろいろあったもんなあ。これ、癖になってしまったらやばいんで何とかしてほしいんですけど。

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