290.空飛ぶ彼女と俺たちと
空の上ってのは寒い。理論とかはよく知らないけれど、これは前の世界でも今の世界でも変わらないものらしい。
そんな中を、スティに抱えられてシーラにぶら下がって飛んできた俺は。
「……まじさぶい……」
休憩に降りた山の中で、がっちがちに固まっていた。いや、ちゃんともこもこのコートとか冬用ブーツとか手袋とか、がっつり防寒仕様だったはずなんだけど。
……ちなみにこの装備、ファルンやチュリシスといった女の子勢が「コータ様に似合います!」と麓の町で狩ってきた、もとい買ってきたものである。山の上だから、防寒装備は充実してるんだよね。しかし、ちっこい女の子用なんてそんなにあるもんかね。生活してるんだし、あるか。
「きちんと抱えてたんですが、どうしても足とか出ちゃいますからねえ。申し訳ない」
「ああいや、それは俺が足引っ込めときゃよかったんだよ。スティは悪くない」
「いえ、最初からしっかり包み込まなかった俺が悪いんです。もともと気温が低いところを、高速で突っ切ってくるんですから」
そんな事を言いつつ、それなりに着込んでいるスティは厚手のコートで俺を覆ってくれてるんだよね。結構暖かくて助かる。ぶら下がってるときはどうしても足が出てしまってたんだが、今は落ち着いたので足を頑張ってコートの中に引っ込める。
「すぐに火をおこします。人里に入れればよろしいのですが」
「目立つわけにゃいかんからなあ。シーラ、頼む」
「はい、おまかせを」
シーラはもともと空を飛ぶ種族だからか、俺たちよりは薄着だけど平気らしい。それでも、しっかり中綿の入った上下着てるんだけど。長距離飛ぶときの服、なんだってさ。
……どっちみち、翼外に出さなくちゃいけないから背中は少しだけ開いてるんだよな。やっぱり、種族の違いと慣れか。何しろ、降りてきてすぐ枯れ木とか集めて焚き火の準備始めてるし。
「あー、スティあったかい……」
「それは良かったです」
もふもふふかふか。……スティ、コートの下は結構薄着なのでこう、布を通してのもふっと感がいい感じなんだよな。あと、しっかりしてるけど弾力のあるおっぱい。ロリっ子になれてありがたや、と思うのはこういうときだな。
「お二人はそちらでゆっくりお休みください。今湯を沸かしますので、茶を淹れて飲みましょう」
「はーい」
「分かった」
一方、シーラは甲斐甲斐しくいろいろ準備してる。小さいコップとか、あれは布で作ったティーバッグか。あと小型ポットとか、何かいろいろ出てくるなあ、あのリュックサック。
……あれ背負ってるから、背中の穴はあんまり気にしないのかな。しかし、荷物にスティに俺って結構重量あるんじゃないか? すごいぞシーラ、というか鳥人族。
「食事にします。お弁当持ってきましたので」
「お弁当?」
「すぐ出かけると言ったら、ファルンたちがサンドイッチ作ってくれました」
さらにお弁当つきとは、これは帰ったらファルンたちのことも褒めないとなあ。
あ、さすがに水はさっさと探して汲んできた、というか水場の近くに降りたらしい。上から見てたんだろうな、やっぱりすごい。……と、着陸地点を確認するのは当たり前か、考えてみると。
「では、食べて少し休んだら山の中を進もう。それでよろしいですか」
「うん。シーラだって飛び続けたわけだしな。ちゃんと休憩しないと、この後何があるかわからないし」
とにかく、まずはあったまってから飯食おう。地味に緊張してて疲れて腹減ったし。




