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028.終わった後のごちそうか?

 スラントの町の中心部には、大きな……とはいっても他の建物と比べて、だけど大きな屋敷がある。一応塀で囲まれたそこは町長の公邸となっており、その一角に衛兵の駐屯所も入っている。まあ、町役場と警察署がくっついたようなもんだな。

 なんで、とっ捕まった馬鹿トリオはそこに引きずり込まれた。駐屯所の方に牢屋があって、そっちで取り調べを受けるらしい。

 奴らの捕縛に一役買った俺たちと、被害者であるミンミカは公邸入ってすぐの応接室でそれぞれ取り調べ……という名のお接待を受けた。お茶と素朴なお茶菓子を振る舞ってもらっただけだけど。


「お話はちゃんと伺いますから、わたくしどもも彼女もあまり酷い扱いをしないでくださいね?」


 もしかしてお前らも同類なんじゃないか、という下っ端衛兵さんに対してにっこり笑顔でのたもうた、マール教僧侶であるファルンのおかげだ。

 いや、いいんだけどさ。俺が敵対するマーダ教の主神だなんてバレなければ、それで。

 とはいえ、衛兵さんの方も当の発言したそいつ以外、そもそもそんな馬鹿ではない。人間以外の種族を差別するような輩はここではでかい顔できないようで、偉いさんですら俺やミンミカにごく普通の対応をしてくれたからな。下っ端のことも叱ってくれるとか言ってたし。

 話が終わったところでさあ帰ろう、となったときだって。


「ご足労、ありがとうございました」

「いえ」

「お話、聞いてくれてありがとうございました」

「ああ。お嬢ちゃんも、しっかり話してくれてありがとうな」


 最初のアホンダラ除いた衛兵さんたちは、俺の目線まで身をかがめてお礼を言ってくれた。上から目線で怒鳴ってきたあっちの世界の上司が懐かしいわ……いや、すっかり忘れてたけどさ。


「うちの馬鹿が、お嬢さんや皆さんに失礼をいたしました。大変に申し訳ない」

「いえ。悲しいことですが、違う種族へ向ける目が冷たい者はどこにでもいますから。貴方がそのような優しい方で、スラントの町は救われたことでしょう」

「ありがとうございます」


 うわすげえ、偉いさんてばファルンの前にひざまずいてるよ。実は邪神の下僕でーす、なんてぶちまけたらどんなことになるやら。しないけど。


「コータちゃん、大丈夫でしたか」

「平気です。あんまり怒っちゃ駄目だよ?」

「わ、分かっておりますっ」


 一方カーライルは、俺がこんなふうに言ってやると引きつった顔がふにゃっと溶けるので大変扱いやすい。大丈夫かおっさん、俺は邪神かつ中身がお前さんとあんまり変わらない野郎だぞ? ちゃんと言っただろうが。

 そうしてシーラは、あ。


「ミンミカさんは、どうするんだ?」

「えと、おやど、まだとってない」


 ありゃ。

 ミンミカと話してるんだけど、宿無しか。何でまた。


「この町に来たばっかりなのか?」

「うん。さがしものして、きたばっかり」


 マジか。

 やってきてすぐにあんなことになったのかよ。不運だな、お前さん。


「お一人でしたら、ご一緒にいかがですか? ねえ、皆さん」

「え?」


 やっと偉いさんたちから解放されたらしいファルンがそう言って、俺にちらりと視線を向けてきた。

 つまりこれは、この不運なウサギさんを懐に入れていただきます、すると。

 こいつ、使えるかどうかは分からないけど、どうも吸ってみたいんだよなあ……何だろな、これ。


「ああ、そうですね」

「いいのではないかな」

「いいと思いまーす」


 シーラ、カーライル、俺の意見はあっさり一致した。主に俺のため、だろうな。

 ミンミカの方はびっくりして目を丸くしてたけど、垂れ耳ふるふるさせながら「いいんですか?」と小さい声で尋ねてくる。

 いや、いいから誘ってるんだけど。


「大丈夫です。もともと四人で大きいお部屋取ってるから」

「そ、それじゃ、ありがとです」


 俺の無邪気を装ったお誘いに、ウサギの彼女はぱっと嬉しそうな顔になって頭を下げた。

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