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287.彼女が行ってその後で

 ルッタが東方砦の様子を見に行って、五日。さすがにまだ情報は来ないよなあとか考えつつファルンとカーライルと一緒に城内歩いてたところで、珍しい相手がすっ飛んできた。……あ、いや、城の中ではよく見るから、こうやって向こうからやってくるのが珍しいだけなんだけど。


「コータさまー」

「んお?」


 ちっちゃいネズミ娘だから、声が俺の正面から来るんだよね。ちょたちょたと走ってきた彼女に、ファルンが声をかける。


「チュリシスさん。いかがなさいました?」

「今、燕さんが大慌てでこれ持ってきましたー」

「燕?」


 チュリシスが両手に持って掲げていた手紙を受け取りつつ、はて燕と一瞬だけ考える。あ、そうだった。


「あー、もしかしてルッタに付けてたやつか」


 なんかあったら大変だから、出張時には燕の子を一人付けるんだよね。緊急連絡があったら手紙持たせろって。無線通信どころか有線通信もない世界だから、ぶっちゃけこれが一番早い。

 でも、つまりルッタに何かあったからこの手紙、なんだよな。


「その者はどうしたんだ?」

「大急ぎで飛んできたみたいでひっくり返っちゃって、今医務室で寝てます」

「そうか、分かった。ありがとう」


 カーライルの質問にスパッと答えてくれたチュリシスは、俺の返事にニコッと笑うと「それでは、チューは仕事に戻りまっす」ともと来た道を駆け抜けていった。ネズミって、向こうでもこっちでもあんなふうにちょろちょろするんだなあとちょっと感心。

 ちなみに医務室、ちゃんとある。麓の村近郊から、スティがお世話になってたらしいマーダ教信者の人に来てもらったわけ。キリンとか言ってたけど、ジラフじゃないよな、あれ。

 ま、それはそれとして。


「ファルン、医務室行って様子を見てやってくれ」

「分かりました。カーライルさん、後をお願いしますわね」

「無論。手紙はお部屋で」

「当然だ。戻るぞ」


 ファルンには、燕さんのところに行ってもらうことにする。ついでに彼女から何か話聞ければいいんだけど、もし様子見るだけですぐ分かる状況だったら怖いなあ。

 で、俺はカーライルを伴って急いで部屋に戻った。ミンミカ含めて誰もいないことを確認してから、開封する。


「……うっわ、やべ」

「コータ様」

「やっぱり、マール教と鉢合わせしたっぽい」


 内容一瞥して、思わず変なセリフが出たのは許してくれ。そのまま中身をカーライルに渡すと、彼もざっと見てうわあという顔になった。

 最初の文章……この後は報告書になってるんだけど、その前文に書いてあったのがこれだった。


『マール教の定期的周回あり。万が一発見された場合は各自で逃走するよう指示をしておりますので、この手紙が届いた場合でも自分の安否はお気になさらず』


 気にするに決まってるだろーが! つかお前、つい最近までマール教側洗脳敵役だっただろうが、と多分こっちの連中にはわからないツッコミを頭の中でしておいた。

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