278.かみさまはおやすみです:朝
ぱちりと目が覚めた。
俺の部屋にはふわふわのベッドと布団を入れてもらってるんだけど、その中にさらにふわふわもふもふがある。枕……ある意味抱き枕なのは間違いないけどな。あったかいし、抱き心地いいし。
「コータちゃま、おきたですか?」
「……あと五分~……」
「ごふんですか? はい、ミンミカもいっしょねるです」
当の抱き枕、じゃなくてミンミカとちょうのんびりとした会話。こんなの、向こうの世界にいた頃には子供のときくらいしかやってねえな。
ただし休みなので、だめよ早く起きなさいなんてセリフや布団引っ剥がしなんてことはされない。んだけどおい、ミンミカ。
「いいのか?」
「だって、コータちゃまはおやすみのひですから」
「そか、ありがとなー」
まあ、こうやって一日ぐうたらするのも悪くはないな。
今日は俺、一日休みの日にしてもらったんだけどさ。でも、さすがに一人じゃ置いとけないし、かと言って他の連中はそれなりに仕事があるし、とカーライルに言われた。
外見上はあいつら俺の保護者みたいなもんだし、分からんでもない。
「ミンミカ、きょうはこーたちゃまといっしょにいるひです~」
そういうことで、護衛兼見張り兼遊び相手でミンミカが一緒にいるわけである。
ほどほどにごろごろしてると、扉がノックされてファルンが顔を見せた。ワゴン押してきてるから、朝ごはん持ってきてくれたんだな。
「コータ様、お休みのところ失礼いたします。お食事をお持ちしました」
「あ、ごめん。ありがとー」
「いえ。ミンミカさんの分もありますわよ」
「わーい。ファルンさん、ありがとですー」
別にファルンはメイドさんてわけでもないので、部屋にあるテーブルの上にざっと並べてくれるだけで終わる。俺のだってそんな豪勢なものじゃないし、ミンミカはウサギなので野菜派だしな。
「お二人でごゆっくりなさってくださいね」
「あれ、ファルンは一緒食わないの?」
「わたくしはいろいろございますので。それでは」
食事の準備だけしてくれて、ファルンはさっさと退室した。いろいろって……と考えかけて、彼女の立ち位置を思い出した。
表向きは相変わらず、彼女は修行旅行中のマール教僧侶なんだよなあ。で、現在は。
「そういえばファルン、麓の町で逗留してることになってるんだっけか」
「はいですー。やまおくのじゅうじんさんたちのために、こっちにかよってることになってるですよね」
あーめんどくさい。修行中の僧侶からの連絡、あまりないと捜索人員が一応出るんだそうな。もっとも一応なんで、いつだったかの山賊とかみたいにマール教側と癒着してる連中なんかはお目こぼしされるんだけど。
それでも、ファルンの所在が分からなくなったことで一応の調査を受けて、それでこの城のことがバレたらややこしくなるもんな。まだ俺たちの拠点、ここしかないようなものだし。
「そういえば一応あっちの僧侶も吹き込んであるけど、そのうちボロが出そうだなあ」
「それはあしたかんがえることにして、ごはんたべましょう!」
「……そうだな。食うか」
ミンミカ、実はおなかすいてただろ。俺もだ。
だから、二人してベッドからのそりと起き上がって朝飯を食うことにした。寝間着のままでいいか、着替えてたら温かいスープが冷めてしまうし。




