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275.森のくまさん、山のぶたさん

 二日後になって、手紙をくれた二つの種族の使者がやってきた。どっちも大柄で、熊さんの方は直立熊で黒い毛皮の筋肉質、ちょっと厚手の皮の服を着ている。豚さんの方はやっぱりオークっぽい直立豚で白っぽい皮膚の脂肪系、こちらは布の服……そっか、寒けりゃ脂肪貯めるよな、うん。

 しかし、鳥人は鳥顔からシーラやルッタみたいな天使系までいるのに、獣人はだいたい直立した獣っぽい感じだよな。俺や混血のガゼルさんとかの耳尻尾付き人間、の方が少ない感じ?


「熊獣人集落の代表として参った、ズライドンである」

「豚獣人種族より参った、ボイドールだ」


 めっちゃ偉そうにしてるけど、その実こちら……正確には俺の前にいるスティの様子をうかがっているのが分かる。まあ、ごっつい虎姉ちゃんだしなあ。しかも正体、獣王バングデスタだし。


「よくぞ参られた。ズライドン殿、ボイドール殿」


 そのスティはまるっきり正体隠すつもりもなく……というか、自分の名前で手紙出してんだから当たり前か。まっすぐに胸を張り、二人を見つめた。睨んでる気はないと思うけど、二人共一瞬びくっとしたな。


「我が名はバングデスタ。かつてサブラナ・マールとの戦いに敗れ地に伏したが、主により再び力を得た獣の王である」

『ははっ!』


 その堂々とした名乗りに、二人は思わずひれ伏した。ま、俺があっちにいてもやるね、アレは。

 熊……えーとズライドンか、そっちまで這いつくばるとは思わなかったけど。豚さん、じゃなくてボイドールなら何か分かるんだけどな。これは俺の、先入観ってやつかね。


「よ、よもやまことに獣王様であらせられたとは」

「何、どこぞの馬鹿者が俺の名を騙って呼び出したと思っていたか?」


 本気でびくびくしてるボイドールの言葉に、スティの長い尻尾が軽く振られた。うん、俺、今スティの背中見てるからな。これ、どっちかと言うと面白がってるぞ。かわいそうなボイドール、食われることはないから安心しろよ。


「構わん、世界が世界だからな。我らが主の名を敬して呼ぶ、それすら許されぬとは」


 一方スティは余裕ありすぎ。もっとも、手紙のときにも言ってたけどまともに戦闘しても負ける気はまったくない、みたいだしな。

 ただ、尻尾が膨らんでるのは……えーと、俺の名前呼べないのに怒ってるのかな? いや、気にしなくていいからさ、そこ。


「ところで、獣王様」


 こちらは熊ってことで多少は落ち着いているらしいズライドンが、軽く咳払いをして話の方向を転換しようとする。スティも、彼の意図には乗るようだ。


「獣王様がかつての姿を取り戻された、ということはよもや」

「うむ。察しが良い配下を持つと、俺も気分がいい」


 これはもしかして、話の転換先が俺ってことか。そのくらいには一応、頭が回る。

 というか、スティはそもそも自分経由で俺に話を持っていきたかったようだしな。そういうふうに、会話を進めていってる。


「主も、世界に戻っておられる。ただ、サブラナ・マールのせいで昔のお姿やお力までは取り戻されておられぬが」

「何と……!」

「そ、そういえば失礼ながら、獣王様の背後から……」


 おーいお前ら、俺のこと見えてなかったというかスティが邪魔で見えなかったな、こんちくしょう。

 でもボイドール、俺の気配は分かってたみたいだな。やっぱり分かるんだ、そういうの。

 じゃあ、まあ顔を見せてやるか。


「さっきからいるよ。バングデスタ、どけてくれ」

「は。失礼をば、いたしました」


 あわあわと横にどけるスティ、こういうところは虎というより大きい猫だよな。

 そうして俺の顔を初めて見て、二人はこうのたまった。


『か、かわいい』

「はい?」


 おいおい、とツッコミを入れる余裕もなかったぞ、俺。

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